四月
昼間にタイムスリップものの映画を観たからだろう。眠りの世界で私はタイムスリップしていた。
少し遠くにいる彼女の顔が、私の瞳いっぱいに映る。まだ少し野暮ったい顔。笑っている。輝いている。好きだ、と思う。真新しい制服の人の波の中で、彼女の姿だけがはっきりと認識できる。まるで自ら光を発しているように明るい姿が、こちらに近づいてくる。瞳がぶつかる。彼女がゆっくりと私に笑いかけるあいだ、私は艶やかに濡れたその瞳から目を離せない。
「初めまして」
高校一年生。彼女はまだ私を知らない。私の身体の半分に存在する当時の私も、まだ彼女を知らない。今の私だけが、初対面の彼女に狂おしいほど恋をする。目が合うたび、笑いかけられるたび、もうやめてくれと心が叫ぶ。大好きだ。愛おしい。
ズレた時間のはざまで、その想いはより一層届かない。