人間だけが持つ特殊な骨格の構造
身体能力のベースになっているのが「運動能力」。
運動能力を高めるなら筋肉を鍛えること…というイメージがありますが、筋肉を鍛えるだけでは運動能力は向上しません。
何故なら、筋肉と骨格は深く関係しあっていて、骨格構造が崩れる(悪い姿勢になる)と筋肉の機能が下がってしまうし、その逆もあるからです。
今回は、運動能力を高めるために知っておきたい「人間の骨格構造」についてお話しさせていただきます。
二足歩行の骨格構造
実は、人間は、他の哺乳類とは全く異なる骨格構造をしています。
直立二足歩行をするため、体重の10%もある頭部が骨格の一番上に乗っている構造になっているのです。
体重の10%というと、50㎏の人であれば5㎏、60㎏の人であれば6㎏。
これは、ボーリングのボールに置き換えると、11ポンドから13ポンドですから、かなりの重さです。
例えば、両手でボーリングのボールを持っている自分をイメージしてみてください。
その状態で、走ったり、ジャンプをするとかなりの負荷が腕にかかることが容易に想像できると思います。
骨格の一番上に重い頭部を乗せた構造になっている人間は運動をすると、ボーリングのボールと同じ負荷が背骨にかかります。
この負荷に耐え、また、運動による衝撃が頭部に伝わらないようにするために、人間の背骨は緩やかなS字カーブを描いています。
このS字カーブがバネの役割をして負荷や衝撃を吸収しているのです。
ちなみに、四足歩行をする動物の背骨はS字カーブを描いていません。
これは、頭部の重さが背骨にかかることもなければ、運動による衝撃が頭部に伝わることも無いからです。
その代わり、重い頭部を支え、動かすために首の筋肉が発達した太い首をしています。
二足歩行の骨格の問題点
さて、人間は、骨格の一番上に重い頭部を乗せている構造がゆえの問題を抱えています。それは、悪い姿勢になると特定の筋肉群に大きな負荷が集中してしまうということです。
正しい姿勢だと、頭部は背骨の上にキレイに乗った状態です。
垂直に積み重ねた小さなブロックの上に大きなブロックを乗せてもバランスが取れているので、特段、支える必要はありません。
でも、大きなブロックの位置をずらしていくと事情が変わってきます。
大きなブロックを少しずらしただけでバランスが崩れ、支えないと倒れてバラバラになってしまいます。
実際の骨の場合、骨格を筋肉が支えているのでバラバラになることはありませんが、崩れたバランスを支えている筋肉群に負荷がかかります。
例えば、スマホをのぞき込もうと15°傾けると、それを支えている頸椎の周りから肩の筋肉群に12㎏の負荷が、30°傾けると22㎏の負荷が、60°傾けると27㎏の負荷がかかるのです。
27㎏と言えば、小学二年生(8歳児)の平均的な体重とほぼ同じ。
もし、小学二年生をずっと抱っこし続けたとしたら、筋肉はパンパンになって固まり、動かしづらくなるでしょう。
それと同じことが、負荷の集中している筋肉にも起こります。
頭を前に突き出した姿勢を取ると、首と肩周りの筋肉群に負荷がかかり続け、筋肉は硬直します。
そして、硬直した筋肉は、本来の働きができなくなり機能が低下してしまうのです。
二足歩行のために人間が捨てたもの
テレビや動画などで野生動物を見て、その筋肉量に驚いた経験があるのではないでしょうか。
肉食、草食に関係なく野生動物は、人間に比べると驚くほどの筋肉があり、非常に躍動的に動くことができます。
人間は進化の過程で大きな脳を手に入れました。
人間の脳は成人で1,200~1,500g。体重の約2~2.5%ほどですが、安静時で全身酸素消費量とカロリーの約20%を消費されています。
安静時で約20%ということは、思考や運動など脳を使う作業をすると消費量はもっと増えるということ。
この大量に酸素とカロリーを消費する脳を手に入れた人間は、脳を維持するために進化をする中で、筋肉量を減らすことを選択したのです。
まとめ
骨格の一番上に重い頭部を乗せている人間は、四足歩行の動物に比べて安定性に欠ける構造である上に、他の動物よりも骨格を支える筋肉量が少ない。
それだけに、骨格構造(姿勢)が崩れやすく、それに伴って筋肉の硬直が起こりやすいという特徴を持っているのです。
骨格構造が崩れると硬直以外にも筋肉機能の低下が起こるのですが、詳しくは、次の記事でお話しさせていただきます。
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