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ヴァンテアン、イラクとの国境地帯へ
たいへんお久しぶりの投稿です。Nambu201です。
今回もヴァンテアンの最新情報をお届けします。
キーシュ島での運航を振り返って
すでにお伝えした通り、2023年2月頃にキーシュ島でのクルーズを開始していたRoyaye Darya号。逐次Marine Trafficで航行状況を確認した限り、最初こそ定期的に動いていたものの最近はずっとバースから動いている様子がみられませんでした。それでも船員の方は常駐していたようです。
2024年6月末から10月にかけて、ホルモズガーン州の本土側に所在するISOICOという企業の造船所に入渠しました。確認した限りは到着以来のドック入りということになります。また11月下旬から年末にかけて現地の船員の方による改装が実施され、メロディピースベルの復旧や後部木甲板の手入れ、前部甲板の色直し、リヴァージュ張り出し窓の手入れ、一部外装の塗り替えといったことが行われました。ブラックの差し色はシャープな印象を受け、ヴァンテアンの初期図案にも通ずるものがあります。
イランはインターネット規制が強く欧米のサービスが使いづらいものの、人々はVPNを通じてInstagramやGoogleを利用しているようです。キーシュ島当時の写真や動画、口コミなどがGoogle MAPにて確認できます。母数が少ないながら評価は満点の☆5を獲得していました。
新天地・アバダーン
2025年に入り1月末、Royaye Darya号はキーシュ島を離れてイラク国境地帯のアバダーンへ回航されました。
キーシュ島からアバダーンへ回航する様子
アバダーンは、イランとイラクの国境をなすアルヴァンド川(イラク側ではシャッタルアラブ川という)に面した都市です。産油地であるほか、ペルシャ湾に通ずる河川は貿易の面でも重要な役割を果たしています。
我が国日本と関係の深い日章丸事件の舞台でもあります。WW2を経て日本は石油資源の確保が急務となり、貿易ルートを模索していました。一方でイギリスの影響下にあったイラン、石油資源をイギリスの企業に握られる状況にありました。産油地があるのに自国民には回ってこない。これに反発する形で1951年に企業の接収・国有化を行います。イギリスは報復として国有企業から石油を輸出する外国船に対し武力介入、撃沈を行うと表明。ここで日本の出光興産はイラン側に共鳴、石油の輸入を極秘裏に強行することとしました。1953年、ようやく契約がまとまり日章丸が神戸港からイランへ出港。行き先はサウジアラビアと偽装、英国海軍の目をかいくぐりアバダーン港から石油の輸入に成功したのでした。この貿易関係は3年で終結してしまいましたが、その後の日・イラン関係に影響をもたらした重大な事件となっています。
またイラクとの国境地帯ということもあり、1980年のイラン・イラク戦争では最前線としてイラク軍の包囲を受けました。結果としては島であることが幸いしてイラクサイドの補給に影響し、イラン軍の逆転という形で終結しています。現在はイスラム過激派やイスラエルからのテロ・報復行動といったリスクから、外務省はレベル3の危険情報を発令しています。
そんな中ですが、現地メディアはアバダーン入りしたRoyaye Daryaが新たなクルーズに就航すると報道しています。工業都市の趣が強いアバダーンですが、近隣にはショッピングモールや魚市場が点在しており、国民の間で海洋レジャーの機運が高まっていることがクルーズ設定の理由だとしています。日章丸事件ゆかりの地で元日本の客船がクルーズを行う、何か因果めいたものを感じます。
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改装を受けハウスやブリッジの壁面がブラックに塗られている
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中東情勢が不安定な中で発足した第二次トランプ政権は、再びイランと核合意を模索する意向を示しているといいます。活躍の場を転々とするヴァンテアンですが、どうか何事もなくイランの人々の憩いの場であり続けてほしいものです。
⚠️現在イランはアメリカ合衆国よりテロ支援国家の指定を受け、経済制裁が行われています。イランへの入国歴がある場合、アメリカ合衆国への入国手段としてESTAを利用することができなくなり、ビザの取得が必要になりますので、渡航を考えている方は十分お気をつけください。
本誌では引き続き、ヴァンテアンの写真・情報を募集しています。ヴァンテアン号にまつわるもの、現地のニュース記事を見つけたなど、なんでもお寄せください。ご協力頂いた方々に対しまして、PDF形式での献本、印刷版の割引頒布をさせていただきます。情報提供、写真の提供を頂ける方は、Twitterもしくはメール[nokuchi201@gmail.com]にてご連絡をお待ちしております。
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