おばあちゃんへの愛であふれる20代に出会って思ったこと
渋谷でバスを待っていると、後ろに20代の男女が並んでいた。二人ともさわやかな雰囲気。ロングコートが似合う高身長で、「美男美女カップルだわ」と思いながら、楽しそうに話している様子を背中に感じていた。
バスの姿が見えると、「じゃあね、おばあちゃん。元気でねー」。
そのとき初めて気がつたいけれど、二人は小さなおばちゃんと一緒だった。もしかすると、若い二人は兄妹なのかもしれない。
「これ、◯◯のお惣菜が入ってるから食べてね」と、デパートの小さな紙袋を手渡す。
バスが到着して前に並んだ人々が乗り込み始めると、
「気をつけて乗ってね」
「大丈夫?」
「座らせてもらってね」
と音量大きめの声でおばあちゃんに語りかけている。
私が、「私、一緒に乗りますよ」と言ったら「ありがとうございます!お願いします」と二人。さわやかすぎて、まぶしい。
先にバスに乗ると、優先席が空いていたので、無事にステップを上って乗車して来たおばあちゃんに「ここにどうぞ」と言って、おばあちゃんが座るのを確認したら、私は後ろの方まで進んで後部座席に座った。
始発だったので、バスはエンジンを止めてしばらく停車している。
二人は窓際の席に座ったおばあちゃんが見える位置に立って、腕組みをしながら楽しそうに話している。
バスがエンジンをかけると、おばあちゃんに向かって大きく手を振り続け、おばあちゃんも無表情のまま手を小さく揺らしている。
バスが走り出して、私がその二人の横を通り過ぎるとき、二人は揃ってペコペコとお辞儀をしてくれた。「ありがとうございます」と言ってくれているのがわかる。
私は大したことをしていないのに。これは、おばあちゃんへの愛ゆえの礼儀正しさ!
素直で明るくて良い子たちが、そのまま20代になるって、こういうことなんだね。
「おばあちゃんが大好き」という気持ちを、こんなにも真っ直ぐ表現できる20代ってすごいなーと思った。
幸せがあふれていた。とにかく美しい。
愛されるのも幸せだけれど、大好きな存在がいて、「大好き!」と素直に表現できる幸せって、やっぱり特別だよね。
そんなことを思ったインタビュア&ライターなまず美紀でした。