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【ライター日記】4人の男性に声をかけられた、あの日。

先生あのね。
今日は4人の男性に声をかけられました。

インタビュアー&ライターのなまず美紀(みきてぃ)です。
幼少期から街中で声をかけられやすく、「街は出会いの宝庫」を体感しております。

さて、10月には取材で数回、麻布台ヒルズに足を運んだ。


その日、渋谷駅で地下鉄を降り、そこから六本木方面行きのバスに乗り換えようとバス停に向かっていたら、乗るはずのバスがちょうど発車するのが見えた。

でも、大丈夫。
いつも、1時間ほど余裕をもって出かけるのは、こういう時に焦りたくないからだ。

「まあいいか」と見送った私は、次のバスを待つべくバス停の最前列に並び、iPhoneを開いて時間を潰そうとした。

すると、「すみません」と男性の声。
見ると、20代後半くらいの紺のスーツ姿の男性。目の大きい、元アイドルのような顔立ち。やけに爽やかでにこやか。

ナンパではなく勧誘だとすぐわかる。

男「こんにちは!バイトを募集していまして」
私「何のバイトですか?」
男「2時間で3000円なんです。書類整理とかしてもらって」
私「は?」
男「正社員もあるんです」
私「しません」

きれいな日本語だけれど、薄ーくアクセントがあって、中国語が母国語だとわかる。

しかし、安く見られたもんだわ。

私「みんな、私に1時間3万円くれます(カタコトの中国語で)」

みんなってだれ?と自分でつっこむ。
ちなみに「みんな」は中国語で「大家」と書き「ダージャー」と発音する。

もう中国語なんて、「こんにちは」と「私は北京に2年住みました」しか言えないと思っていた。
だけど、ちゃんとイラッとしたときは出てくるんだね。

そう、私は最低1時間3万円の女だ。
適当だけどね。
まあとにかくケタが違うと言いたかった。

あっさり立ち去った男の背中を見ながら、「何の書類か聞けば良かった」と思った。

バイトの中身には、ちょっと興味がある。
もしかすると、スパイとして潜り込んで、犯罪を防ぐことに協力できたのではないか。

そんな妄想をしていたら、「すみません」と男性の声。

また?

振り返ると、50代ぐらい、警備員の服装。
バスの誘導係だ。

警備員「今の、何の勧誘でした?」
私「バイトの募集って言われました。2時間3000円。書類整理って言ってましたよ」
警備員「なるほど」

そう言うと、警備員は去っていった。先ほどのやり取りを一部始終見ていたんだろう。

しかし、たとえ私が契約書にサインし始めていたとしても、彼はただ見ているだけだった気がする。

まったく。

「このやり取り、SNSのネタにできるかも」とiPhoneを開いたところで、またしても「すみません」と声がかかった。

今度はな〜に?

振り返ると、推定90歳のおじいさん。
細身。立っているのも辛そうで、バス停横のガードレールにしがみついている。

男性「このバス青山学院に行きます?
タクシーが全然来なくて」
私「えっと、ちょっと待ってくださいね」
バス停の看板で確かめる。

私「ああ、行きますよ」

話していると、おじいさんのスマホが鳴る。

おじいさん「今ねえ、バス待ってます。タクシーが来ないのでね。え?」
おじいさんが私の方を見る。

おじいさん「ここどこですか?」
私「渋谷です」
おじいさん「渋谷。渋谷でバスを待ってます」

私はサッとGoogleマップでバスの路線を確認する。

私「もう2分でバスが来るので、青山学院なら12時ごろに着きますよ!」

おじいさんがちゃんと復唱する。

おじいさん「12時ごろ!12時ごろに着きます」

おじいさんは立っているのが辛くなったのか、話しながら、バス停のコンクリート台の上に腰掛ける。

痩せ細った体に、きちんと背広を着ていて、バス停と一体化するように座っていても、どこか気品すら感じる。
そう、スーツではなく背広。長い人生、しっかり仕事をされてきたんだろうなと想像する。


気がつけばバス停に並ぶ列は長くなっていた。

そして、バスが到着。
私はおじいさんを先に乗車させて、後から自分も乗り込んだ。
正確にいえば、おじいさんは長い列を抜かしての「横入り」だけれど、さすがに文句を言う人はいないよね。

おじいさんはちゃんと、青山学院前で降りていった。
降りた後もキョロキョロしていたけれど、無事に誰かと合流できるように祈る。

そうして、私も麻布台ヒルズに到着。
渋谷の喧騒から抜けてくると、このスペースの余裕がとても贅沢に感じて、気持ちが豊かになる。

まだ取材の集合時間までは余裕がある。
ゆったりと庭園を散歩。
気分は1時間3万円以上の女。

すると、「すみません」と男性の声。

今度は何のご用でしょう?

振り返ると、旅行者。

私「写真ですよね。中国の人ですか?」
男性「台湾人です」
私「あ、そうなんですね。アクセントが中国語の方かなと思って」
男性「おー、そうですか」
私「私は北京に2年住みました(中国語)」
男性「おー、すごいですね!発音きれいです」

せっかく褒めてもらったのに、それ以上、何も言えない。
どうした?
やっぱり、平和なときは「ニーハオ」と「私は北京に2年住みました」しか言えないんだね、私。

いや、さっき咄嗟に出てきた

「みんな、私に1時間3万円くれます」

なら、まだ覚えてる。
でも、ここでそれを言うと面倒なことになりそうだ。
それに書類整理ならまだしも、ソッチの話ならケタがさらに2つ違う。

そんな雑念を振り払い、なんとか言葉を搾り出す。中国語検定2級、がんばれ。

「私は大学生のとき、台湾に3回行きました」
平和だ。

そしてなぜか日台友好の写真を撮る。

今日という日は、なんだか盛りだくさんだった。
ただ、取材に来ただけなのに。
今日の本番はこれからなのに。これから私はコジェネレーションについて話を聞いてくる。

やはり街は出会いの宝庫だ。
昔から、良い人にも悪い人にも、街中で出会ってきた。

次はどんな「すみません」が私を惑わすのか楽しみだ。
インタビュア&ライターなまず美紀でした。

▼おまけ
声をかけられたと言えばこんなネタもあった。
実はnoteの下書きに、その他諸々の出会いが埋もれている(おばあさん含む)。そのうち表に出そうと思う。

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