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CRYAMYとわたし

2024年6月16日(日)東京都 日比谷野外音楽堂

CRYAMYの初の野音での公演が開催された。
1年前から告知・チケットの販売・そこに向けてのツアーまで組まれていた超肝入りの企画。告知で綴られるカワノの言葉やメインビジュアルはただならない雰囲気を纏っていて、CRYAMYはこの日に解散してしまうんだろうか、とうっすら考え続けながらの1年間だった。

あの有名な野音にいける!という興奮と、解散への不安を抱きつつ北海道から前乗りし、先行物販には12:00から並んだ。かんかん照りで蒸し暑い日だったが、待機列が木陰に作られていたのと、リハの音漏れが聞えていて、1時間半の待機はあっという間だった。Pinkが聞けて感極まった。
お目当のグッズ(ロゴT、野音T、世界のレコード、レコードバッグ、ポスター、#2とYOUR SONGのキーホルダー、サファリハット)もしっかりゲットし、あとは開演を待つのみ。

入り口にあった売店でお水と缶ビールを一本ずつ買って入場した。弧を描くように配置されたベンチと、年季の入った石造りのステージは、これまで映像や写真で見てきたものと同じだった。ステージには赤字でCRYAMYと綴られた黒いフラッグがはためいて、スタッフさんが機材の最終調整を行なっている。開演したらCRYAMYが終わってしまう、死刑宣告待ちのような人生で一番短い開演待ちだった。普段はあんなに長く感じるのにね。

17:00ちょうどにライブが始まった。開演ギリギリになっても物販列が終わらず、途中切り上げとなっていたようだ。
大森くん、レイくん、たかしこの3人が先に出てきて、最後にカワノが歩いてきた。黒のスラックスに白いシャツがはためいてかっこよかった。
「かっこいいこと言おうと思ってたけど、この景色見たらそんなことどうでもよくなりました」と笑いながら颯爽とギターを構えるカワノ。遂に始まる。

ここからはあまりにもずっと強烈で正直あんまり覚えていない。意識を取り戻せた瞬間瞬間の断片的な記憶をセトリに沿って書き起こそうと思う。

◼️第一部
1.WASTER
あのイントロが夕方の外気と混ざり合って余りにも切なく響き渡り、一曲目から涙が止まらなかった。溢れないように見上げた空が晴天で美しかった。カワノが、CRYAMYが、”わたし”のために生きてこのライブを最後までやり遂げるという宣誓のような、そんな幕開けだった。音楽にあれほど心臓が締め付けられる経験は後にも先にもこの時のWASTERだけだろう。

2.Sonic Pop
2曲目で大好きなSonic Popが来るとは思わなかった。基本的にはメロディが気に入らないとハマれないタイプで、そんなわたしの好みにブッ刺さる曲の1つがこれだ。疾走感がたまらない。ツアーではアルバム曲しかやらなかったので、久々に聞く過去曲に興奮が止まらなかった。

3.普通
懐かしい、懐かしすぎる。#2に出会った大学生の頃に戻ったような不思議な感覚だった。あの時期はYoutubeで普通とテリトリアルをエンドレスで聴きまくっていて、あまりにも供給が足りずメルカリで#2を10,000円で買った。(まさかの今回の物販では投げ銭で#2が売られていた、、、トホホ)

4.crybaby
これもsonic popと同じく私が大好きな曲だ。確かsound cloudにデモ版が上がっていて、その時からずっと聴いていた。CDが出る前にYoutubeにMV(ヤマト・パンクス作)が上がって、CDが手に入るまではそっち見てたな。1分じゃ物足りなくて、誇張抜きで何度も何度も繰り返し聴いた。あのMVの再生回数の数%はわたしだ。野音ではさらに一瞬で、最初の一音目から最後の鳴り終わりまで網膜と鼓膜に全部焼き付けてやろうという執念で聴いた。

5.まほろば
この流れでまほろばを入れてくるのは、あまりにも完璧なセトリ。CRYAMYが私たちに音楽を届けるために、何かを伝えるために、文字通り命を燃料にしてライブをしていた。ただただ”CRYAMYとわたし”で今ができていた。

6.光倶楽部
ここで初のアルバム曲。2ndアルバムは今までのCRYAMYの曲とは違う雰囲気の曲が多かった。メロディからCRYAMYにどハマりした私は、正直のめり込むように聴けてはいなかった。でもツアーを経て今回初めて過去曲と混ざり合って奏でられる2ndアルバムの曲たちは、紛れもなくCRYAMYの曲だった。夕暮れに怪しく重たく響く演奏とカワノのシャウトは、新たなCRYAMYの一面を私に見せてくれた。

7.変身
「生きる喜びを忘れたら この世には何にも残せないわ」まさか野音で聴けるとは思っていなかった。CRYAMYの曲では数少ない(と個人的には思っている)前向きな、ポジティブな、鼓舞するようなこの歌詞は私のお守りの言葉だ。この記念すべき日に拳を突き上げてこの曲を聴けたことは、私にとって間違いなく生きる喜びであった。

8.注射じゃ治せない
9.豚
10.E.B.T.R
注射・豚の重々しい雰囲気からEBTRにつながる流れは、アルバムやツアーと違い新鮮に感じた。日比谷という日本の中心で歌われる注射じゃ治せないと豚は、執念のような、怨嗟のような、おどろおどろしさで響き渡った。そしてその流れでのEBTR、やるせなさがより伝わってきて、私はカワノのために何かしてあげられただろうか、そんなことをぼんやり考えながら聴いていた気がする。

11.Pink
Pinkは演奏がとにかくかっこいい。特にラスサビ直後アウトロ頭のギター、大好き。あんなにビビッドピンクのライトで照らされているのにこんなにポップじゃないことある?かっこよすぎるだろ。「ピンクと溶け合う夜まで」って歌詞が好き。

12.HAVEN
上京前のカワノの心情で勝手に聴いた。私はこんなにどこかに行きたいとか、どこにも行けないとか、そんな風に外の世界への鮮烈な憧れや、現状への強烈な不満を抱いたことはないけれど、CRYAMYの曲達を生み出し続けるエネルギーの確かなルーツを感じた。

13.物臭
昔の友達のことを少し話してから歌い始めた。記憶がぼんやりしてるけどきっと今はもういない友達のことだった気がする。乾いていて湿度のある、突き放して、でも遠くでちょっとだけ見守っていてくれるような、そんなCRYAMYならではの温度感の曲。友達が好きって言ってたなこれ、いい曲だよね、野音で聴けてるよ、羨ましいでしょ、って思いながら聴いてた。

14.Delay
イントロの演奏がなぜかすごく耳に残った。爆音だったからだろうか。ずっとクライマックスのような気迫だったが、ここで少し気持ちが落ち着いたように思う。深呼吸をしながら気持ちよく聴いた。

15.ALISA
サビの高音が綺麗に野音に鳴り響いた。カワノってこんなに歌うまかったっけ。初めて見たときから幾度となく感じた「このまま歌い切れるんだろうか」という気持ちは一ミリも浮かばなかった。明らかに音源越え。

16.GOOD LUCK HUMAN
「君が飾った夕方を窓から覗くことが好き」の歌い出しでもうだめだった。好きと終わらないでと外で聴く心地よさとで情緒がめちゃくちゃになった。公園の草木の匂いを吸い込みながらCRYAMYの、カワノの、愛の誓いを一心に聴いた。記憶が飛ぶほど泣いてほとんど覚えていない。
「絶対賛美歌は終わらない、生涯賛美歌は途切れない」でどうにかこうにか上げた拳で、気持ちが伝わっていたらいいな。

17.ディスタンス
昔好きだった人とキツすぎる離れ方をした時に、自分と重ね合わせてずっと聴いていた曲。乗り越えた後は、思い出して辛くなるからとしばらく封印していた時期もあった。ここで歌ってくれたことで、やっとわたしの中でも本当の意味で消化しきれたような気がした。布団で丸まってほとんど動けなかったあの期間、ずっと寄り添ってくれていたのは間違いなくこの曲だった。節目節目で必ず歌われるディスタンスは、CRYAMYにとってもきっと大切な曲なんだよね。

◼️第2部
18.道化の歌
急遽やることになったような素ぶりで出てきたカワノと用意されたアコギ。「冷たい哺乳瓶」の曲は初めて聴けたので純粋に嬉しかった。モヤがかかったような音源の聞こえ方と打って変わって、クリアに聴こえる道化の歌。選曲理由きになるなーと思いながら新鮮な気持ちで聴いた。

19.テリトリアル
わたしがCRYAMYにはまったきっかけの曲が、アンコール後2曲目で遂にきた。どんなシチュエーションや気持ちで聴こうと、この曲はわたしにとって一番特別な曲だ。ボロそうなスタジオで叫びかき鳴らすあのMVが、そのままステージの上にあった。いい意味で何もかもどうでもよくなれるこの曲でこの日もわたしは、解散や終わりを何もかも忘れて全力で彼らを目撃した。本当にカッコいい曲。

20.鼻で笑うぜ
この曲CRYAMYの中で一番ノれる。ここにきてちょうど良い軽さで普通に楽しかった。個人的にred albumといえば変身と鼻で笑うぜ。ラーラーラーラーラーラーラーラララ〜は一緒に歌っちゃったよね、みんな歌ったのかな。

21.戦争
ここで風がサーって吹いたのすごく覚えてる。レイさんのギターがめちゃくちゃかっこよく響いてて、この日幾度となく思った「気持ちいい」をこの曲でもしっかり感じた。CRYAMYらしい一瞬で終わってしまう短い曲で、余韻が切なかった。

22.ten
誰かが堪えきれず最前まで走ってきていた。昔の野音での事故の話を聞いて、それはNGって知ってたし、案の定スタッフさんに止められて席に戻ってたけど、抑えられなくなる気持ちめっちゃわかるよと思いながら眺めてた。歌い出しの「確証の無い愛を癖になって唱えていた」で既に昂ぶりmax。昔のアコースティック版も好きだけど、red album版の方が疾走感があって好き。

23.ウソでも「ウン」て言いなよね
上がりきったボルテージがここで一度落ち着く。コーラスの声と相まるこの曲は、2ndアルバムの豚や葬唱とはまた違う、CRYAMYの新たな一面だと個人的に思った。ここから一歩一歩終わりに近づいている感じがした。

24.完璧な国
サビのメロディが大好き。カワノの優しさと遣る瀬無さと願いを感じる一曲。この日野音で発せられる「今日にでも消えて無くなっても構わないと言えてしまった」の意味を考えずにはいられなかった。この曲も節目節目でセトリに入れてくれる気がする。

25.天国
この曲もSound Cloudにあった気がする。デモは全部アコギだから音源に起こされると印象が全然違くて、それを感じるのが楽しみの一つだったこと思い出した。
MVはカワノが飛び出してきた地元で撮影されたらしい。HAVENと対になっているのか、心境の変化があったんだななどと勝手に感じている。約10年あれば心境も考えも変わるよねと、同い年として勝手に共感しながら聴いた。

◼️第三部
26.葬唱
カワノのシャウトに合わせて激しく明滅する白いライト、あ、ぶっ倒れるかも、と思うほど強烈な演出に、ただならぬ気迫と覚悟、ここで葬唱を入れる強烈なメッセージ性を感じた。棒立ちで見入ってしまったし、終わった後の映像作品を一本見終わったかのような疲労感と充足感に、みんなでひたすら拍手を送った気がする。演奏時間は結構長いが、一瞬の出来事だった。

27.待月
28.月面旅行
29.プラネタリウム
30.街月
もうやりすぎ、やりすぎの完璧セトリ。
だんだん空が暗くなって、バックにそびえ立つビルの隙間から月が見えた。外で聴くCRYAMYってだけで感無量なのに、時間の計算がバッチリで天気まで味方につけて。真摯にひたむきに、芯をもって突き進むと、最終的にこんな神様を味方につけたみたいなことが起こせるんだなって今になると思うよ。シチュエーションの情報処理に精一杯で、正直歌詞と演奏にまで意識を向けきれなかったので、お願いだから映像化してほしい。宵の時間がよく似合うバンドだなって思ったよ。

31.マリア
ここでダメ押しマリア、、、Sonic Pop・crybabyに続いて私の好みぶっ刺さり曲が満を辞して登場。ベースに乗せた疾走感溢れるあのBメロが最高なんだ、、、普通に興奮で感極まって泣いた。ここにきて切なさ以外で泣かせてくるCRYAMY一体何なんだ、まだまだやってくれよ。

32.THE WORLD
2ndアルバムの1曲目が、恐らくかなり終盤であろうこのタイミングで歌われた。「We are CRYAMY from Tokyo」の自己紹介がここで来るって一体どういうこと、、、?と思いつつ、最後まで見届ける覚悟を新たに、固唾を飲んでカワノの振り絞る「うるせえ」を見守った。

◼️第四部
33.人々よ
メンバー全員が掃けて2度目のアンコールを経て始まった「人々よ」は、道化の歌と同じく、アコギを持ったカワノの弾き語り。もうすぐこのライブが終わるとわかってて、それが終わったらCRYAMYがどうなってしまうかわからない。そんな心情で聴く弾き語りのこの曲は、カワノが”わたし”たちに向けてくれる最後の言葉のようだった。「私の声は私が決めたように響くから どんなに悲しくたって別にいいよ」「あなたの声はあなたが決めたように響くから どんなに悲しくたって別にいいよ」

34.世界
最後だ、イントロが始まる直前に直感的に思った。それくらい空気が張り詰めていた。ひたすら”生きろ”と投げかけるこの曲は、CRYAMYからの最後のメッセージだと思って聴いた。あのひたすらに長い間奏、確実に4人全員が命を削って奏でていた。鬼気迫るとか、気迫とか、私の語彙力じゃ表しきれないけど、とにかく何か大事なものを削ぎ落として燃料にして動いている感じがした。全員ギリギリの状態で、この曲の最後の一音を鳴らしきるまでとにかく走り続けなければ、みたいな雰囲気だった。あんな風に生きれたことは私の人生で今まで一瞬たりともない。だからこそこんなに惹かれたんだろう。何よりも美しく尊いひとときだった。

最後ふらふらになったメンバーが、挨拶もそこそこにバラバラと掃けていった。こういう節目の公演って、メンバーみんなで手繋いでお辞儀して拍手みたいな流れじゃないんかいとちょっと突っ込んだが、そんな見た目上のパフォーマンスはいらないくらいに、CRYAMYとわたしたちはこの3時間半の中で互いに感謝と賞賛を送り合っていた。
最後にレイさんが今まで聞いたことないでかい声で「ありがとうございました!!!!!」と叫んで消えていった。

野音は絶対に20:30で演奏を止めなきゃいけないらしんだけど、世界は20:29分に終わった。あまりにも全てが完璧だった。鳴り止まないアンコールにスッタフさんが「20:30で音止めなきゃんで物理的に無理なんです!!」って必死にアナウンスしてて、それでもダメ押しアンコールが続いてちょっと面白かった。結局"解散"についての直接の言及はなく、まだ続きがあるんじゃないかと期待する気持ちは私も痛いほどわかった。(本当はスティーブ・アルビニの遺作を流す予定だったらしいが、本編が長引き叶わなかったらしい)

どのタイミングで話していたか忘れてしまったが、カワノが今回のMCで伝えてくれたことは3つ、「健康でいろよ」「悪い人もいるけど良い人も必ずいる」「長生きしろよ」お願いされてしまったからやるしかない。

どこかで「これからもよろしく」って言いかけたように聞こえたり、最後ギターを叩き割ろうとして冗談ぽく笑ってやめた一幕があった。野音での光景をみて、解散を思いとどまってくれたことを願って待つほかない。

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カワノの脱退が2024年7月5日(金)19:00に発表された。言葉を尽くしたその長文には、ここまで孤独ながらも走り続けたこと、その中であまりにも疲れてしまったこと、これからのCRYAMYはカワノが抜けた状態で続いていくこと、カワノはもう金輪際表舞台に出てくるつもりはないこと、スタッフやメンバー、ファンへの感謝が綴られていた。

正直もっと器用に、時には何かを飲み込んで活動をしていれば、もうちょっとだけ長くCRYAMYを見ていられたのかもしれない、と思ってしまう。だけどそうじゃない、初志貫徹の精神で突き進んできた彼らだったからこそ、ここまで強烈に魅了されたんだと思う。

悲しいし辛い、もうカワノ作る新しい曲が聴けないことを思うと心が潰れそうだ。

だけどCRYAMYを続けていくことの困難さを、わたしよりはるかに分かっているメンバーとスタッフの方々が「やる」と言った以上、わたしはその決断を信じてついて行くしかない。新しいボーカルが入るのか、どんな形態でCRYAMYが続いて行くのか全くわからないが、今は信じて待つのみ。

カワノの、そしてメンバーとスッタフの方々の幸せを、心から願っています。

CRYAMYはわたしの人生で一番のバンド。
ありがとう、愛してるよ。

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