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ゴミ箱にティッシュを投げ入れる。嗚呼、人生。

丸めたティッシュを手に取る。鼻をかみ、丸めたティッシュ。

春は花粉、冬は寒さで出てくる鼻水は、本当に困る。固形で出てきてほしい。

ティッシュを手に取った右手を上げ、狙いを定める。今居るコタツからゴミ箱への距離は約1m弱。ゴミ箱の中は満タンでない。

大丈夫。イケる。そう信じ、振りかぶる。上からティッシュを軽く投げる。そしてゴミ箱へ入れる。たったそれだけ。こんなの、居眠りをしているターゲットを狙うスナイパーのようなものだ。

手首にスナップを効かせ、ティッシュを手放した。


──ポトッ。



嗚呼、この世は無情なり。

途中までは完璧だった。このまま行けば確実。そう思っていた。ただ、最後まで何が起こるのかがわからないのが野球。そして人生。

投げたティッシュは、弧を描きながら、的はずれな位置へと着地した。

天高く舞い、そして地に落ちてゆくティッシュ。それは、まさしく今の自分かのようであった。テレビの西洋劇の笑い声が、自分を嘲笑っているかのように思える。

コタツから這い出、ティッシュをつまみ上げ、ゴミ箱の上で手を放す。


──ポトッ。


ティッシュは、ゴミ箱へ落ちていき、もうすでにゴミ箱に入っていたティッシュと見分けがつかなくなった。

ゴミ箱を掴み、コタツに持ってゆく。これでいいのだ。ゴミ箱との勝負には負けたが、これでいい。確実なのが一番だ。


──クシュン。


コタツから出たからだろうか、くしゃみをしてしまう。すなわち、鼻水が出てきた。まあいい、ゴミ箱はここに持ってきている。無問題だ。ティッシュ箱に手を伸ばす。



そこは、もう既に空であった。ティッシュ箱だったものは、ただの穴が空いていて、そこに透明のビラビラがついているだけの箱になってしまっていた。

予備のティッシュは、ここから約1.5m離れた、廊下の床に直で置かれている。

自分の近くには、スマホの充電器がある。ここでふと、テレビの西洋劇のカウボーイが目に入る。


…なるほど。


スマホの充電器を手にする。


第二ラウンドのスタートだ。

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