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ブラックビスケッツ「タイミング」のこと

マガジンにまとめようと思って、間違って消してしまったので再投稿です。

namayagi

2024年3月1日 23:55

「タイミング」の再ブーム

昨年の紅白歌合戦でなつかしい歌が流れた。
なぜこのタイミングでこんなに昔の曲がと思ったら、「2021年にカバーしたKlang Rulerのバージョンが、2022年にTikTokで流行したから」らしい。

当時の印象は、テレビ番組発の曲

 リアルタイムで聞いてたときには、コスプレしたウッチャンナンチャン達が、二つのグループに分かれて番組の中で曲をリリースしていたイメージしかなかった。ドーバー海峡横断したり、社交ダンスの大会に出たり、そういう企画のうちの一つという印象だった。

 その当時、番組が曲を出すのは珍しいことではなかった。むしろ、そういう流れが流行っていた。
 今回の紅白で有吉さんが歌っていた「白い雲のように」も、『進め!電波少年』というテレビ番組から猿岩石名義で誕生した曲だったはず。
 あのモーニング娘。もテレビ東京の『ASAYAN』という番組のオーディション企画の落選者で結成したグループだったし(「LOVEマシーン」であんな爆発的に売れるとはね)。
 フジテレビのバラエティ番組『とんねるずのみなさんのおかげでした』から野猿(というスタッフととんねるずが結成したグループ)が歌を出して、結構売れていたような。
 そういう時代だったんだと思う。

 だからこの「タイミング」という曲も、テレビ番組に出てる芸能人が歌った曲というカテゴリで、「仮装してキャラ付けして歌うのおもしろいよね」くらいに思っていた。

「タイミング」の歌詞がめちゃくちゃ刺さる

 でも、昨年の紅白歌合戦で久しぶりに聞いたら、その歌の良さに思わず泣いてしまって自分でも驚いた。
 それで、今更ながら改めて歌詞をじっくり味わいたくなった。

急に冷たくなって ソッポ向かれたり
なんでなんでなんで?
どんなにいいことだって 間がワルいとね
カチンときたりで

『Timing(タイミング)』ブラックビスケッツ

 学校や集団などの人間関係で、言葉中心のコミュニケーションがうまくいかないことがある。コミュニケーションで一度もつまづかない人間なんていないんじゃないかとすら思うし、もしいるなら自分もそうなりたかった。

 自分にはそんなつもりはないのに、空気が読めなくて場の雰囲気がおかしくなる。
 声をかけるタイミングが悪かったのか、自分の言葉のチョイスが悪かったのか。正しいことを言ったつもりが相手をムッとさせてしまったり、言わなくていいことを言ってしまったり。
 覚えておくだけでいいはずのことを忘れてしまったり、夏休みの最終日に慌てて宿題しちゃったり、同じ感じで約束の時間にどうしてもギリギリか、少し遅れて着いちゃう。

 あ、孤立してる?嫌われてる?浮いてる?
 いじめまで重大な感じではなくて、なんか馴染めていない感じ。
 よそよそしいような、距離感遠いような。
 しかもその原因が自分のどんくささにあるような。
「なんで、なんで、なんで?」って思うけど、どうしたらいいのか結局よくわからないんだよね。
 みんなどこで教わってるんだろう。

それがなぜか 君が喋り出すと
イヤな空気すっかり変えてしまうから...

ズレた間のワルさも それも君の"タイミング"
僕のココロ和ます なんてフシギなチカラ

『Timing(タイミング)』ブラックビスケッツ

 でも、すごくナチュラルに場の雰囲気を変えられる人もいる。
 仕切ってやろうとか、意地悪しようとか、そういう野心や攻撃性はみじんもなくて。休日の公園でシャボン玉飛ばしてる人みたいに、急にみんなの緊張を解いてしまう人がいる。

 今の話題とずれてたり、天然ボケみたいな返答したりするんだけど、誰もが憎めない。むしろ、そのズレに思わず笑ってしまう。

 狙ってそういうことをすると、鼻についたり、わざとらしくなったり、ぶりっ子だなんだと言われるのだけど。
 自然とそういう空気感で会話ができる人がいると、ああこの人と友達になりたい。仲良くしたいと心底思う。

妙にセコセコ生きて 楽しくなくて 昨日と同じで
君と出会う前まで キモチ張りつめ 折れそうだったよ

小さなこと いちいちムカついて
笑い方も なんだか忘れてしまってた

『Timing(タイミング)』ブラックビスケッツ

 周りから浮かないように、波風が立たないように、場の雰囲気を見ながら、周囲の顔色をうかがいながら過ごす日々はつらい。
 特に小中高の学生時代は、しんどかった。

(社会人になっても人間関係の問題や、コミュニケーションの取りづらさはあるし、その難易度も上がる気がする。でも、給料が発生するから報われるところもある。まあ嫌だけど仕事だしな、って。最悪の場合、退職なり転職なりすればいいや、とも思うから逃げ道もある。)

友達と歩きながらしゃべってる時に自分だけ会話に入れなかったとか。
自分だけ持ってないゲームとか、知らないマンガやドラマの話題とか。
聞こえるような聞こえないようなひそひそ話や、クスクス笑う声とか。
全部が小さな棘でチクチク首元を刺してくる。

ヒトも街も宇宙も まわれまわる"タイミング"
ヘンにね合わせ過ぎても たぶん辛いだけさ

たまに間のワルさも 大事なんだね"タイミング"
君と僕のシアワセ 笑いながらいこう

『Timing(タイミング)』ブラックビスケッツ

 ここがサビ。ここで一気に明るく、軽くなる。
「ヘンにね合わせ過ぎても たぶん辛いだけさ」という言葉に救われる。
 全部吹っ飛ばして、「まわれまわれ」って言ってるみたいで。
 踊って忘れてしまえそう。
 その遠心力でちょっと心が軽くなる。

 嫌な人と嫌な雰囲気のなかで過ごす時間は、永遠のようにめちゃくちゃ長く感じるけど、そのタイミングを過ぎたらぱったり会うことがなくなったり、ふと「もうどうでもいいや」と気にならなくなったりする。
(そうでないときもある…あるけど…)

誰もみんな 君のようならいい
争いまで きっとなくなったりするでしょう

『Timing(タイミング)』ブラックビスケッツ

 ここで泣いてしまう。
 あーみんな、君のような人ばかりだったいいのに。
 そしたら、仲良くできるかもしれないし、つらい気持ちになることもない。

 ここの歌詞が、友達という他者へ向いてる感じもあるし。
 タイミングの悪い自分自身に向いている感じもある。
「ズレた間のワルさも それも君の"タイミング"」っていう、ズレちゃう自分への肯定。
「みんな、君のような人ばかりだったいいのに」って自分に言ってもらえているようで、うれしくてホッとして泣いてしまう面もあるのかも。
 タイミングは悪くても、自分は君のこと良いなって思ってるよって。
 別にタイミングを合わせようと必死にならなくても、君の自然なタイミングでいいんじゃないかなって。安心させてくれる。

ズレた間のワルさも それも君の"タイミング"
僕のココロ和ます なんてフシギなチカラ

『Timing(タイミング)』ブラックビスケッツ

 「ズレた間のワルさも それも君の"タイミング"」って、はげましてもらったから、もう3月だというのに昨年の年末の紅白歌合戦にまつわる話をしてみた。

 たぶん、この曲を聴いていた当時は、人間関係や自分の鈍さに、割と深刻に悩んでた時だったのだ。
 その頃にはこの曲の歌詞を深く考えずに聞き流していたけれど、曲を久しぶりに聴くと、なつかしさの思い出補正つきで当時の記憶が湧き上がってくるから、より涙腺を刺激するんだろうな。

 なつかしさを感じるとともに。なぜかこの歌を聴いてると、ウド鈴木のことが頭に浮かぶ。
 ちょっと行動のタイミングがずれてるし、コメントとかも独特なんだけど、みんなに愛されてる感じ。
 この番組に出てたからってのもあるんだろうけど。(ウドちゃんはポケットビスケッツの方にいる)

 普通に考えたら、歌ってるビビアンのことをイメージしてるんだと思う。
(Wikiにも「南原清隆が『ビビアンは全然流れも関係無く急にボソッと何か一言言ってタイミング悪いんだけど、みんなを和ませて笑いになったりするんだよね』と発言したことが歌詞のヒントになっている」って書いてあった。)


 Klang Rulerがもう一度ブームの波を起こしたおかげで、この曲と再会できたのだから。
 そのセンスと曲選びに感服する。
(昔の曲を踊れるようにアレンジして、Tiktokで話題になるという最近よくある流れにもうまく乗ってる。)

 そういえば以前、奥田民生の「ひとり股旅」でこの「タイミング」をカバーしてるのを聴いた時にもいい曲だなと思った記憶がある。
探してみたけど音源化はされていないようだった。
(ライブ映像のみなのかな。)
 平井堅のカバーしてるバージョンも聞いてみたいな。

まあでも、なんやかんやで原曲が一番良い。しみる。
歌の上手い下手とか、アレンジの違いとかもあるけど。
ビビアンのあの片言だけど、聞き取りやすい日本語。
南原さんと天野くんのジャギジャギした歌声。
あの掛け合いあってのこの曲なんだと思う。

「ずーれた まーの わるぅさ もーぉ」
って伸ばしがちに歌うのも、耳にすーっと入ってくる。
最近は気が付けば口ずさんでる。

部屋の整理してたら、思わぬ掘り出し物と再会したような気分だ。
そういう曲がまだまだいっぱいあるのかもしれないな。

(間違えて消してしまったので再投稿、元は↓)

https://note.com/namayagi/n/nb5b55a45f730


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