海の向こうの花火大会。
それまでの私は、特に特徴もなく普通に生きてきた
だけのただの三流大学の2年生だった。
バイトの帰り道。夏だというのに、夏らしいこともしてないな…なんて、自転車走らせていると、、
坂道の先に、向こう側の海岸で打ち上がってる花火に気がついた。
あぁ、B海岸の花火大会今日だったのか…。
今年も1人。見に行く相手もできなかったなぁ。。
今年の夏も何もなく、終わるのかな?
そんなことを考えていた。
ふと…寂しくなって家の近所のレンタルビデオショップに寄ってみた。
何か夏っぽいのないかなぁーと物色していると、、『ナビィの恋』と言う変な名前のDVDを見つけた。
沖縄の離島を舞台にした恋愛ドラマ?みたいな話で、『今週の店長のオススメ!』みたいなコーナーに平積みにされていた。
恋愛映画で、おばあちゃんが主人公?笑
なんだかその設定がおもしろくて、思わず手に取った。
内容はとても不思議で、ミュージカルみたいに突然歌い出したりする演出もあったりした。
50年近く寄り添った老夫婦のもとに、50年前に生き別れになった元恋人が現れ、おばぁの心が揺れ動く。
結局、おばぁは、50年連れ添ったおじぃを捨て、その元恋人と、駆け落ちする…みたいな話だった。
なんとまぁ、恋愛に歳なんて関係ないんだなぁー。なんてボーッと見ていた。
私は、物語の内容もだが、シーンひとつひとつに現れる背景、海、ビーチ、のんびりと歩くヤギ…
そして、真っ赤に咲き誇るブーゲンビリアの赤い花に
魅了されていた。。
今年の夏も、いつもと同じように過ぎていく。
それでいいと思ってた。
70歳のおばぁが恋愛に生きる物語を見た…。
なんだか、負けた気がした。
その翌朝。
バイト先にしばらく休むと連絡し、、
口座に入ってたバイト代の残り5万円と、少しの着替え、いつか描こうと思って買ってたスケッチブックを抱えて、大通りに立っていた。
スケッチブックに、でかでかと『沖縄』と書いて。。
通りすがる人の嘲笑は、なぜか気にならなかった。
今年の夏は、いつもと違う夏にするんだ!
19歳の夏は大人と子供の境目。
まだギリギリ子供のフリしてバカやれる!
初めて止まってくれたオジサンに、いきなり『沖縄』なんて書いててもとまってくれないよ?
ってアドバイスもらった。
でも、オジサンは止まってくれたでしょ?笑
まぁ、そうだな。
んで、なんで沖縄に行きたいんだ?
えと、、
いろいろ理由はいくつかあるんだけど…
一番大きな理由は…
ハタチ過ぎるともう大人なんだからって、なんか無茶は出来ないような気がしてて、、
だから…
10代最後の年に、思いっきりバカやりたくて!笑
バカを?…笑。
そりゃーいい!
若いうちは、なんでもやったらいい。
実はな。
私も若い時、アメリカを自転車で横断したことがあってな。
夜とか、銃の音が聞こえてきたり、野宿してたら、コヨーテが寄ってきてなぁー…
みたいな話が飛び出してきた。笑
昨日までは、僕も普通の19歳の大学生だった。
今この瞬間、沖縄を目指すバカなヒッチハイカーという肩書きが生まれた。
私は、なんだか、誇らしげな気持ちになった。
いつも対岸の海で打ち上がっていた花火。
今年は、真下から見上げることになりそうだ。
海の向こうの花火大会。
遠くで見ていても、あの熱気は伝わらないんだな。
思い出は、遠くに見てると綺麗で美しいモノ
にしか見えてなかったけど…
ホントの思い出はもっと熱くて、もっと汗くさくて
もっともっと泥臭く、グシャグシャにもがいた歴史が…
遠くから見ると、眩しく輝いて見えるんだな。
そうか!そういうことだったんだ!
僕はなんだかニヤついていた。
不安とドキドキで公園で野宿しながら…
ワクワクしていたんだ。
今年の夏は、まだまだ始まったばかり。
さぁ、沖縄までいくよ!
僕の花火を打ち上げるんだ!
『海の向こうの花火大会』 終わり。笑
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