旅に出たい - 冬の北海道を旅してきた(8)大空町は「消滅可能性自治体」
このシリーズの【(1)そのアウトライン】で記したが,旅の6日目は女満別のとほ宿「夢畑」に宿泊した.
女満別は2006年3月31日に東藻琴村と合併し、現在は大空町となっている.
女満別町 - Wikipedia
東藻琴村 - Wikipedia
この時点での旧女満別町の人口はおよそ5,900人.同じく旧東藻琴村は2,800人である.よって合併により人口8,700人の町が誕生したことになる.
ところが最近のデータを見ると6,570人.なんと合併時より2,000人以上,率にして20%あまりも減少しているではないか.
ところでこの24日,民間有識者でつくる「人口戦略会議」が、全国市区町村の4割以上の744自治体が「消滅する可能性がある」との報告書を発表した.これは日本中で非常に大きな反響を呼んでいる.
自治体4割「消滅可能性」、30年で女性半減 人口戦略会議 - 日経新聞
詳しくは上記のリンクで示した日本経済新聞の記事を読んでもらえばわかるが,要するにどうやっても人口減少に歯止めがかからない市町村が存在するということである.
さらに北海道に関して言えば,117もの自治体が「消滅可能性自治体」に該当する.この数は道全体のなんと65%にあたる.
そして上の地図を見てわかるように大空町もそこに含まれているのだ.たしかに合併からわずか20年足らずで,人口が2割以上も減少している実態を見れば,非常に厳しい現実が浮き彫りになっている.
ところで私は2月,夜のJR釧網線・女満別駅に降り立ち,深々と雪が降り続くうら寂しい駅前の街並みを目の当たりにした.そして車に乗せてもらって宿まで行ったのだが,もちろん歩いている人は皆無で,行き交う車もゼロに等しい.
少し走ればカラマツの林が両側に広がる北海道らしい風景に変わる.昼間であれば,また厳寒の季節でなければ多少は違っただろうが,街全体に活気がないという現状は,それほど変わらないのではないだろうか.
若年層の流出.それに伴う出生率の低下,高齢者率の増大.ひいては財源の先細りとインフラ維持の危機.それから来る住民サービスの低下.そこに良いことはまるでない.悪循環を絵に書いたような現実.果たして打つ手はないのだろうか.
話は変わるが,北海道といえば誰しもが思い浮かべる雄大な自然の原点.厳しい自然が広がる一方,その風景を求めて多くの観光客が訪れる.行ってみたい観光地として,真っ先に北海道が選ばれるのも納得できるところだ.
ただ観光で潤っているのは,一握りの地域でしかないのは周知の事実である.例えば小樽,札幌,富良野,函館,そして一部の有名な温泉街に人々は集中する.スキーシーズンのニセコはインバウンド客で大変なことになっているが,これは例外中の例外.大部分の地域はそれとはまったく無関係に,産業の基礎が農業,酪農,漁業という,昔ながらの1次産業中心という構図は変わっていない.
また企業誘致にしても,道央圏がまっさきに候補に挙げられ,事実先進的なな工場の建設が進められている.まさにそれ以外の地方は置いてけぼりなのである.
さてここでは大空町をテーマにして話を展開してきたが,先の地図で分かる通り,将来の北海道については大部分の自治体で五十歩百歩だろう.人口戦略会議は2050年を一つの区切りと見てはいるが,ここ10年くらいでじわじわと影響が現れるのは必至である.
未来は変えようと思えば変えられるはず.それには今何をすべきか.日本の国力が衰退化しつつある今,国民は真剣に考え,そして実行に移していく必要があると強く感じる.
北海道を「試される大地」といって片付けてしまうのは,あまりにも悲しいではないか.
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