写真漂流 - モノより体験,カメラよりも被写体との出会いを
shot with SIGMA dp0 Quattro
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写真撮影が趣味の人は,たいていがカメラやレンズも好きであろう.
機材をアップデートさせると,もっとすごい写真が撮れる.写真家なら誰でも思い当たる話ではないだろうか.
これはかなりの部分で正論だ.しかし多くの場合それは錯覚に違いない.
つまりは表現の方法が変わらなければ,新しい写真を生み出すことはできないことを知るべし.新たに手にしたカメラやレンズで素晴らしい写真が撮れるか否か,新鮮な写真表現ができるかどうかはその写真家の力量であり責任でもある.
さてハードを変えるよりももっと効果的だと思えるのは,ふだん目にしているものではない別のものを,写真の被写体として認識していくことではないだろうか.それはある意味で新しい世界との出会い.そこから昨日とは違った刺激を受けることによって,今までの表現にはない,まったく別の感覚でシャッターを押すことができるのではないかと考える.
たとえば未知の土地へ行ってみること.それは遠いか近いかの問題ではなく,何か新しい行動の引き金になりそうな予感を秘めている場所のことだ.
また朝早くとか,あるいは都会なら地下へ降りてみるとか,街ではなく海や山へ関心を持つとか.ふだん触れることがなかった非日常のものに出会う機会があれば,無意識のうちに表現が変化するのではないかと思う.
たしかに新しいカメラやレンズを手に入れるのは喜びだ.これでよりいっそう写真を撮っていけるに違いないと,写真家なら誰もがそう思う.
でもその前に覚えておこう.表現の幅を広げることが一番重要で,それにはより多くのものを見て刺激を受け,それをどういうふうにして自分に取り込むか.そういったたくさんの体験を重ねていくことが,写真家としてもっとも大切なことを.
この世界にはまだまだ魅力的なものが満ち溢れている.それはあなたが気づいてくれるのを待っているのだ.カメラやレンズに凝る前に,そういったモノたちに出会う機会を増やしていきたいものである.