写真漂流 - 天体写真
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小学3年生の時,天体望遠鏡を買ってもらった.駅前通りの商店街にある眼鏡店で,たしか29,800円だったと記憶している(今あらためてこの価格を思うと,小学生の玩具?としては破格の金額である!).口径6センチ焦点距離1200ミリの屈折望遠鏡.これだとF値が20と,今ではとんでもない値だが,その頃はF15が屈折望遠鏡の標準値だった.F値を大きくとることで,レンズの光学性能を誤魔化しやすいことは後で知ったことであるが.
さてこの天体望遠鏡.月や木星土星などかなりよく見えた.と同時になぜか写真を撮りたいと思ったのだが,それはその当時の天文雑誌に掲載されていた天体写真に影響されたのだと思う.
家にあったカメラは親父が使っていた「ペトリ35」.45mmF2.8のレンズが付いた距離系連動のカメラである.望遠鏡に取り付けるアダプターを買ってもらって取り付けてみるが,どうもうまくいかない.視野がケラれるのだ.
それでどうしたか?ここで一眼レフの登場である.オリンパスPEN-Fをねだって,それが初めての自分専用のカメラとなる.アストロなるメーカーから直焦点(対物レンズだけで撮影)と間接焦点(カメラと対物レンズの間に接眼レンズを入れて合成焦点距離を伸ばす,つまり拡大率を大きくする)用の簡単なアダプターが売り出されていたので,これを買ってもらって(ずいぶん子供の趣味のために迷惑をかけたものだなー),初めて満足できる写真が撮れるようになった.
ここで言っておきたいのは,月や太陽は焦点距離のおよそ1/100の大きさの像を結ぶということだ.だから1200mmの直焦点ではフィルム上に12ミリの月が写ることになる.これはハーフサイズのカメラにちょうどよい.
K(ケルナー)12mmとかMH(ミッテンツェー・ハイゲンス)9mmとか,接眼レンズを使えば,月面のクレーターも拡大して撮影できた.
しかしここで大きな,そしてどうしようもない問題が浮上する.それはカメラブレである.架台が貧弱でPEN-Fのシャッターショック,ミラーショックに耐えられないのだ.拡大率の低い直焦点では速いシャッター速度で切るので差し支えなかったが,間接撮影で月面を拡大しようとすれば低速なシャッター速度になり,ブレが発生するとまともな写真が撮れない.
こうやって天体写真に重要なのは光学性能だけではなく,架台の頑強性や精度も写真の仕上がりに大きく影響することを理解する.それと同時に持っている望遠鏡でいくら頑張ってみたとしても,天文雑誌を飾るような写真は撮れないことを知った次第である.
そのようにして望遠鏡にカメラを取り付けて撮る天体写真の限界を知ってからは,次第に星野写真の分野に興味を持つようになっていったのである.
(続く)