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伝単


長「これ、なんだと思う?」
岡「わぁー!なにこれー!綺麗!触っていいですかー?お札ですか?」
長「触っていいよー。」
岡「なにこれ、裏にめっちゃ文章書いてあるし、柄がない。普通の紙ですね。...全然読めないですー。アラビア語は読めないですよー。」
長「お、そうそうアラビア語。」
岡「えー、難しいなぁ...。全然わからない!通行証明書ですか?」
長「ううん。ヒントはねー、2003年。」
岡「2003年がヒント!?うーん。めっちゃ難しい!なんだろうなー。」
長「そのお札に書かれてる人はわかる?」
岡「わかりません、初めましてです。」
長「あー、それだったら難しいかもー。」
岡「うーん...。圧倒的知識のなさ!勉強不足!めちゃくちゃ難しいですねぇ。でもまだ答えは言わないでくださいね。」
長「ちなみに、その人物はフセイン大統領だよ。イラク戦争だね。」
岡「イラク戦争ー??全然わからない...。イラク戦争に関して何も知識がないです。うーん。なんだろうなー。踏み絵てきななにかですか?」
長「ううん。」
岡「うーん。さっき見せていただいた地獄銀行のみたいに、燃やしたりするために使うやつですか?」
長「ううん。笑」
岡「えー、なに!全然わかんない!ペラペラだしなぁー。保存には適してない感じがしますねぇ...。量産されてそう。ファーストデイカバーみたいなやつですか?右端に...たぶんこれ刷られた番号ですよね。」
長「おぉー。ファーストデイカバーではないけど、量産されてるってのはいいね。これ、戦争中にイラクで撒かれたんだけど、刷ったのはアメリカなの。」
岡「刷ったのはアメリカーー??なんでー?何のために??あ、そこが問題なんですね。」
長「そう、そこが問題なんだよ。笑」
岡「うーん、なんでしょう?指名手配てきな?」
長「おぉ!1番近くなった」
岡「うーん。...なんですかこれ?わかりません。(ギブアップ)」
長「これはデンタンだよ。」
岡「...デンタン?どんな漢字ですか?」
長「伝単」
岡「初めて聞きました。」
長「戦争中にさ、敵国の兵士とか国民に飛行機とかに乗ってさ、空から大量にばら撒くの。ここにはね、フセイン大統領のせいであなたたちは苦しんでるんですよー、アメリカは擁護しますよーって感じの文章が書いてあるの。」
岡「あー!伝単って言うんですね、見たことあります!」
長「見たことあるでしょ?日本でもよく撒かれてたじゃん?」
岡「実際には見たことないですけど、映像では何度か。でもこんなに鮮やかなんですね!映像だと全部白黒だから...。」
長「あー、そうだね。でね、これなんでお金の柄が刷ってあるんだと思う?」
岡「うーん、その国でデフレを起こさせて経済を麻痺させるためかなぁ...?でもお札じゃないですもんね。笑」
長「うん、お札の柄が刷ってあるだけ。」
岡「うーん...。」
長「戦時中はね、敵国の伝単を拾っちゃダメなの。自分の家の敷地とかにこういうのが落ちてきたら、憲兵や警察へ届けることになってたの。」
岡「へぇー!そういえば『ハウルの動く城』でも敵国からの伝単を拾うなーって言ってる描写があった気がします。」
長「あぁ、そう?面白いね。でね、拾っちゃダメって言われてるからみんな拾わないのよ。でもさ、お金だったら拾いたくならない?」
岡「なるほどー!そういう心理を利用したデザインってことですか!めちゃくちゃ面白ですね!」
長「そうそう!めちゃくちゃ面白いよね!」
岡「よく考えられてるー!すげー!」




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