L字に足をあげて
14時頃。目覚めのよさを見せつけるかのように飛び起きる。時間を無駄にしないように、道中、すべきことから逃げる術を練る。脳内議論を終えたタイミングで洗面所に着く。一切の無駄なく、すべきことではない洗顔をし終えると、そこには、あるはずのない、阝があった。
これは由々しき事態だゾ、と声に出して、朝食を用意しながら、再度議論へと潜り込む。
今までとは異なる違和感がある。阝の谷間が綺麗すぎる。何故だろう。もっとなだらかな盆地を描いていたはずだ。それ以外の変化は。手櫛に違和感がある。長さだ。自分で切ったときに切りすぎたはずだ。上部、中部、下部に分けて切る、という指南を元に切ったところ、中部のみ切りすぎたと記録されている。今考えても不思議なミスだ。癖も相まって突き刺さるように立っているというわけか。
ただ
これが阝なのか阝なのか。これはかなり重要な問題だ。へんとつくりでは大きな違いがある。同棲を始めてわかる部分があると言うが、阝のあるへんちくりんな姿をみられて別れるなんてままある話だろう。
パッと見る感じ、阝だろう。ボールペンのペンクリップには申し分ないが、iphoneのSIMカードを取り出すのには少々心許ない。多分、多くの人がこれをみてそう感じるはずだ。気づけてよかったと心底思う。
次に、どのようにして阝にするか。更に切る、リスクが高い、ヘアアイロンを使う、技術不足で卩になること必至、中々妙案が浮かばない。美容室に行くというのは論外である。迫害を体験するのは画面の中だけでいい。かくなる上は、パリカンでいてまうか。
パリ。
焼きたてウインナーの弾けた音と飛び出した肉汁が僕の目を覚ました。目覚めがよく先入観をもつ僕が後頭部にふさわしい漢字はないと教えてくれた。
果たしてそうかな。
そう言ったのは、電車に揺られている僕だ。