視線

『ミナノモノ・ミニ』のトリを飾った『奇冥』(読み:きみょう)を書き上げてから、というほど明確でもありませんが、強いて言えばその時点から、僕は一つだけ、今までしていなかったことをし始め、もとい、再開しました。

僕はいつからか、道行く人の顔を全く覗かないようになっていました。

幾年ぶりに(習慣なので明確な時点も最古の記憶もない)、道行く人の顔を見てみると、想像しているよりもずっと目が合って、世の人々はこんなにも周りの人間を見ているのだなと、初めて気がつきました。初めて、と言ってしまうほど、小さい頃に身についた習慣なのか、僕の人格が変化した時点でリセットされた習慣なのか、分からないし、どちらであろうと特に問題はありません。

再開して思ったことと言えば、「やはり覗かなくていいな」という予想通りの感想でしたが、覗いた方が面白いこともあると思えたのは良い収穫でした。

そもそもこの行為を再開したのは、劇中に使ったことは無関係で、友人知人と共に居る時、「すれ違った人間に関する話題に付いていけない」ことに気づいたためです。そういう時、「ごめん、見てなかった」とよく言っていたり、それとは違う時、街中ですれ違い通り過ぎるまで友人知人に気づくことの出来ない僕は、それほどまでに道行く人の顔を覗いていないのです。気が付いてからは、流石にバランスが悪いだろうと、既に東京へ赴く頃の話ですが、再開に至りました。

次は何が変わるのでしょうか。楽しみです。

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なまもののまま
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