雑記(20240906)ー胡桃から覗くー
最近、横になりつつ紙をめくる時間が増えた。5年間断続的に続いた体調不良が嘘かのように身体が軽いことがあり、1ページ読むだけで放り投げていた書籍の内容も頭にだいぶ入るようになった。
もともと、米澤穂信の<古典部>シリーズ、<小市民>シリーズのような、ミステリだからといって人が死ななくてはいけないというものでもなく、一つの謎から登場人物をどこまでも掘り下げていくような小説が読みたかった。米澤穂信だったか、作品解説に載っていた<日常の謎>ということばとその思いとの親和性が極めて高いことに気づいた。
なんとなくGoogleで「日常の謎」と検索すると、Wikipediaの「日常の謎」という単語についての記事が浮上してきた。開くと、たくさんの作家の名前が羅列されている。ひとまず、その起源なのであろう北村薫『空飛ぶ馬』を読もうということになった。すぐに久々にブックファースト新宿店まで出向き、店奥の文庫書架に詰め寄って、お目当てのものだけ引っ掴み、会計を済ませて自室に戻った。
https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488413019
また本が読めないのではないかという心配はどこかに飛んでいってしまっていた。ページを繰り始めるとあっという間に就寝時間になってしまっているほど私は『空飛ぶ馬』に熱中した。<私>が謎をかけ終わる頃にはもう答えが見えている円紫さんの鮮やかさ、<私>のあり様にももちろん惹かれた。特に私が惹かれたのは、登場人物の心理状態を繊細に描きとっているところである。特に「胡桃の中の鳥」という章の幼児ゆきの動きの描写に表れるような言葉の尽くし方には心を打たれるものがあった。幼児という言葉がおぼつかない存在が全身を動かしもがき求める姿が目の前にあるかのような迫力があった。
『空飛ぶ馬』以降、<私>シリーズを読み耽るようになり、『六の宮の姫君』までは読み進めた。さらに話題書を中心にではあるが、本を読む様になったので以降も何かちょっとした本好きとしてここに書いていけたらいいと思う。
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