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横浜リリー

横浜のホテルで街の灯を独り見下ろす

女は細い指でおざなりのキスの名残を拭う


港町で暮らす女にお似合いの名前だと言って私をリリーと呼んだキザなとこも弱いくせに馬鹿なくせに本当の男になりたいと体に傷ばかり作ってたとこも


ここに帰って来さえすればね
また愛してあげるわ

仁義なんて流行らない言葉 海に投げ捨ててよ


本牧から悪い噂が聞こえて来た時
険しい顔を見せた


あなたを止める手だてすらなくて



どうせ私のこと不幸にするなら他にいい女が出来たとかね、そんな泣けるものにして

どんな嘘だって知らないふりをしてきてあげたけれど

部屋のドアを出る時の「じゃあ、また。」は嘘じゃ許さないから


汽車道の橋で欄干にのぼってみせて果てもない夢の話

こんな結末じゃなかったはずよ



たぶんあなたのことね
私なんか忘れちゃって

震えながら泣いて泣いて引き金を握ってる



横浜のリリーは今違う街に暮らしてる

誰も彼女の事をリリーとは呼ばない遠い街で





以上、ポルノグラフィティの曲『横浜リリー』でした。

本当はこの横浜リリーを題材に、僕が脚色を加えて短編小説を書こうと思っていました。そして最後に、「これはポルノグラフィティの曲、横浜リリーを基にして書きました。どうです?素晴らしい曲でしょ?」

といった具合で紹介しようとも考えていました。


しかし、どう頑張ったって歌詞そのまま載せる方が綺麗でした。ポルノグラフィティが好きだからか、自分の脚色すべてが陳腐にしか感じない。

ポルノグラフィティは稀にこういった”聞く小説”を出す。Gt.の晴一さんの詩の良さを再三思いさせられる。もっとこういう切ない聞く小説を出してくれ。


改めて

この横浜リリーは横浜に暮らす女とその女をリリーと呼ぶ男との話。リリーとはLilyのことで植物、百合のことである。百合の花言葉は「純粋」「無垢」。

そんな花言葉を知ってる男が女の事をリリーと呼んだ。何ともキザである。キザではあるが、少年のようにひたすら一途に惚れた女を守ろうとする。何とも健気である。


時代は戦時中、本牧とは横浜市中区本牧地区のこと。ここには終戦後に米軍施設が出来た。日本人が立ち入り禁止区域で、完全に米兵の居住区域になっていた場所だ。

横浜リリーに出てくる男は米兵であることが分かる。


そんな米兵に本牧からの悪い噂、戦地への招集命令だろう。

軍の上層部からの命令である。無事に帰ってくるか分からない。行ってほしくはない。だが、何の権限もない非力な女では止める手だてなどあろうわけがない。


私を不幸にするなら他にいい女が出来たとか、そんな泣ける嘘をついてでもいいから、せめてどこかで生きていてほしい。部屋のドアを出るときの「じゃあ、また」。“また“って言ったからね。帰ってくるんだよね?リリーはただ見送るしか出来なかった。


昔、彼とした思い出話に耽るリリー。夢の話をたくさんしたがこんな終わりじゃなかったよね。



帰ってきたのは一通の便り。おそらくあなたのことだろう。終に「また」は嘘だった。重い事実が突きつけられ受け止めきれないリリーは後追いも考えた。


横浜を離れたリリー。彼との思い出の地。横浜にいると彼を思い出してしまうから。



やっぱ何度見てもいい歌詞である。すごいね。歌詞の意味を知ってから聴くとより一層心にくるものがある。個人的にラストの歌詞がかなり好き。

誰も彼女の事をリリーとは呼ばない遠い街で

なんてオシャレな締め方なんでしょう。かっこよすぎる。読後感がすごい。


ちゃんと意味を理解しながら聞いた中学当時、かなり衝撃的だった。メロディーしか聞いてこなかった自分に、歌詞ってこんなに意味込められてるんだって教えてくれた曲。

そこから歌はメロディーラインだけでなく歌詞もちゃんと含めて嗜むようになった。おかげでどれだけ語彙が増えたか。本当、ポルノグラフィティ様々である。




最後に、この歌のモデルは明言されてないが実在したとある女性とされている。


横浜には”メリーさん”という伝説的な娼婦がいた。白塗りの厚化粧にフリルのついた純白のドレスという印象的な風貌や謎に満ちた人物像から、数多くの歌や文学、演劇の題材となっているとのこと。


メリーさんは横浜で戦時中、米兵相手の娼婦として生活していた。

戦後、実際は米兵相手の慰安所だったとされる、関西のとある料亭で仲居として働いていた。その料亭で知り合った米軍将校の愛人となる。

しかし、朝鮮戦争勃発後、現地へ赴いた彼は戦争が終結するとそのまま故郷のアメリカ合衆国へ帰り日本には戻らなかった。

以後、彼女は一人2005年1月、84歳で生涯を終えた。


また、生まれは岡山であり、横浜に移る前に日本人と結婚しているが2年で離婚。そのときの人間関係が種で自殺未遂を経験しているともされている。






どう?ポルノグラフィティ、いいでしょ?
すごくオススメよ。

逆にここまでしておいてオススメじゃないなんて 、リリーも許してくれないもんね?



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