記憶にございません。
ワタシには小さい頃の記憶が欠落している。
不遇な少年時代を過ごした訳ではない。むしろ、両親にも愛されて、比較的に恵まれた少年時代だったと思う。でも、詳細となると記憶が断片的だ。
最近兄とお寿司に行った時、ワタシが最近海老を食べるとアレルギー症状が出る話をした。
あー、エビが好きでよく食べてたもんね。と兄。
え?ワタシですか?そんな記憶はない。エビなんて好んで食べてないぞ?でもアレルギーが今になって出るなんて、昔食べすぎたからなのか?
覚えていることといえば、ワタシが男の子と言われることに違和感があったことくらいだろうか。特に女子になりたいと思っていた訳ではない。でも、自分は男でも女でもない、所謂オカマと言われる類の人間だった。
ワタシは3人兄弟の末っ子。しかも男3人だ。母はどうしても3人目は女の子が欲しかったらしい。
ワタシが生まれた時、また男だったらと聞いて、父はがっかりしたらしい。要は、両親ともに女の子が欲しかったんだろう。
昔のアルバムを見てると、ワタシは女の子のように育てられていたようだった。
端午の節句に兜の前で、白いレースのワンピースを着た小さい子がお兄さんらしき人と写真を撮っている。
よく見たらワタシだ。
おい、何してくれてるんだ。息子に白いレースのワンピースを着せるなんて、英才教育もいいとこだ。
自分がゲイであることのルーツを見つけて、なんだかホッとしたことを覚えてる。生まれながらの指向ではない。英才教育の賜物だ。
そういえば、小学校のころ、ワタシの誕生日会を開いていたが、決まってプレゼントは猫やらなんやらのぬいぐるみが多かった。
一度、招待してない同級生の男の子が来て(何故来たのかは謎)、その子のプレゼントが戦隊モノのフィギュアで、大層ガッカリしたことを思い出した。
そうだ、ワタシは女子だったんだ。
そうなると、会社で感じてる男社会的な付き合いが窮屈なのは合点がつく。
そういう人付き合いふぁ窮屈に感じる性格ではなく、そもそも彼らとは思考が違う。だって、頭の中は女子だから。
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無理か。
まあいいや。
どうせ、明日になれば記憶にございませんから。