友達としては好きだ。
もうかれこれ4年前くらいだろうか。
無性に好きだった人がいる。
決して世の中的にはイケメンでは無いが、切長な目をしたワタシのどタイプ。
彼とは運命のアプリ(いつもこう呼んでる)で出会い、食事に何回か行くうちに、定期的にうちの家で遊んだり、食事をしたりする様になっていた。
彼はすごく優しい人だった。
ある時うちの家に遊びに来る時にパンを買ってきてくれた。ワタシが休日の朝食はパンを食べるのが好きだと言ったから。近くに美味しいパンがあるから買ってきたよ。ではない。
美味しいから、君に食べて欲しくて買ってきた。
だ。
ただ買ってきたんじゃない。ワタシに食べて欲しくて買ってきたんだ。どうだ。こんなセリフがサラッと出てくるなんて。今思い出しても間違いなく好きだった。何度でもあなたに恋に落ちます状態。
他にもあった。
ワタシはどちらかと言うと、しっかりしてて、なんでもそつ無くこなしますよタイプだ。実際ある程度のことは大体自分でできる。
彼とワタシの家で一緒にご飯を作ろうということになった。聞くと彼は料理が得意だそうだ。ハンバーグか何かを作ったと思う。ハンバーグなんて自分のために作ったりしないから手順がよく分からない。それを見て彼は、
君は座ってて。僕が作るから。
と言った。
なんでもない言葉だ。でも、ワタシにとっては新鮮だった。主導権を珍しく明け渡したのだ。そつ無くこなせるワタシを休憩できた。
そんな関係がすごく心地よかったし、外見も内面も好きだった。
なので、次に進みたくて意を決して聞いてみた。
好きなんだけど、僕のことどう思ってる?
もちろん、好きだよ。を待っていた。それ以外の選択肢は用意されていない。
それって、恋人としてってこと?
と彼がいった。
ん?はい?どういうこと?恋人以外に何があるの?友達に好きかどうかなんて聞かないよ?
そうだけど。。?
うーん、恋人としてはないけど、友達としては好き。
そこから記憶がない。彼をバス停まで送って行ったらしいが、本当に記憶が曖昧なのだ。
ショックという言葉では言い表せない。理解不能。青天の霹靂だ。そんなことある?デートもしたし、毎週のように家に来て遊んだし、することしたよね?
でも、ふと冷静に考えた。
彼から誘われたことはあるのか。彼がうちに来てご飯を食べたいと言ったことはあるのか。彼が水曜に休みだと聞いて、偶然を装って有給を取ったのは誰なのか。
恐ろしい。恋は盲目とはこのことだ。自分が好きだと思って勝手に暴走してただけなのに、気づかないふりをしていた真実を目の前にして、相手を宇宙人みたく思ってしまう。
彼は気づいていたに違いない。ワタシの友達以上の気持ちを。むしろ気づかないなんてあり得ない。それに気づきながらも付き合ってくれた。切ろうと思えばいつでも切れた関係だ。
最後まで彼は優しかった。
独りよがりで、結果を伴わない、一方的な恋だったけど、彼の優しさは今思い出しても心が熱くなる気がする。
秋になって涼しくなるとふと思い出す。
そんな恋だった。
なんて、ちょっと臭すぎるかな。