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⑤ Ⅰ、2017/8/3 さよならと

7月7日に彼の自動車整備店を訪れてから、約1カ月経っていました。
車は、問題の故障の他に数カ所の不具合を見つけてもらい、そして丁寧な提案や整備を受ける中で、自ずと彼とのやりとりも密になりました。
週に数回連絡をとり、毎週工場を訪れ、その度に、私は彼への気持ちに右往左往、上がったり下がったりしていました。

この頃自己嫌悪というより、相手に悟られた場合、気持ち悪いと思われるだろうと、それだけが怖かったです。
怖いのと、好きの勢いとで、自分が真っ二つになりそうというか、なっていました。
なんて、無駄な作業だろうと思います。
世間的に見たら、主婦が恋愛とか、掃いて捨てるような話です。自分もそうだと思って、自己否定感と自己肯定感の低さに、ほんとうに苦しかった。
自分が自分を貶めていました。その時の私には、それが、自己防衛でもあったのです。
私はどこかで冷静だ。
解っている。
こんな、下らない思いを抱えて、と。
でも、消せない想いでした。

恋をしたのは奇跡でした。その位、この恋は私の中で光っていて、きれいなものでした。
 

以下、当時の呟きで記録します。読みにくいし、超独りよがりで気分悪くするかも。
個人的記録なので、その辺はほっといてやって下さると有難いです。

不具合が全てなおり、車を引き取りました。
請求書をもらって、改めて支払いに行こうと決めました。
1度でも多く、彼に会いたいという私の愚策です。

彼が独り身だとしても、既婚だとしても、私にこの想いを表現する資格はないと思っていました。
やめなくては、止めなくては、その方法ばかりを心配していました。

幸い、この支払いが終われば、もうこんなに会わなくなる。会えなくなる。
それは良いことだ、それで良いんだと思いました。

いつも、仕事終わりの夕方に行っていたので、この日は仕事を抜けて、午後2時くらいに行こうと決めた。
その目的は以下。

快晴。
上出来なお天気。もしも泣いても、この快晴、この暑さ、笑うしかないお天気。

怖いくらいの気持ちだった。
彼に会いたいけど、会って、自分を保てる自信が無くて怖ろしかった。

工場に着くと、学生のアルバイト君たちに指導してる彼がいた。彼の友達もいて、挨拶した。
いつもは遠くから待つ私だったけど、その日は、近くに行って彼を見ていた。
もう、こんな想いを抱えて彼を見るのは最後だから、恋をした私が、恋をした彼の姿を、心に刻み込もうと決意して、見ていた。


すごくすごく、見ていた。

しばらくすると、彼は私を事務所の中へと促した。
いつも何かしら出してくれたけど、今日はコーヒーだった。
彼の分も煎れていたことが、すごく嬉しかった。忙しそうなのに、代金のやりとりだけじゃなくて、一緒にコーヒーしてくれるんだなって、嬉しかった。
話を途切れさせないように、わからないこといろいろ聞いてた。
頭の中で、ぜんぜん考えてないのに。
笑いながら、答えてくれた。

最後に、彼が運転席のドアを開けて、オイル交換のキロ数を確認していた。あと1,000キロちょっとで、と。

彼の工場を後にする
長い直線の道路が続く
バックミラーを見ると、見送る彼が立っていた
いつまでも、立っていた

また、見た。もう小さくなるのに、彼が見えた
こんなこと無かったから、目が離せなくなった
曲がり角が近付いていた
鼓動が、別の意味で早くなるのを感じた

見なければ良かった見送りを、私は見てしまいました。
この見送りに何の意味があったのか、ほんとのとこは未だにわかりませんが、多分、車を見ていたんです(笑)そりゃそうだよね。
ただひとつ言えるのは、こんな見送りを受けたのは初めてだったと言うことです。それで、嬉しかったり、期待したりしたんです。
いつも、事務所や工場の中で挨拶したら、そこで終わりだったので。
道路まで出ての見送りは、初めてで、嬉しいのか悲しいのか、どちらもか。とにかく、なんで、と、涙が出てくる出てくる。

心の中で、私からこの想いを切り離し、大切にしまおうと思っていた「奇跡の恋」という思いが、断ち切れずに涙になって出て来たような気がしました。
私から、切り離せない。
今の自分がこの思いをなくしたら、なんて寂しいんだろう、悲しいんだろう、そんな感じだったと思います。大切な感情だったのです。心を、占めていたのです。

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