神様なんていないから
✳︎これを読んだ日は雨の日でした
スピリチュアルが嫌い、それにすがる人を見るのも嫌い。だって神様なんていないと私は知ってるから。
昔何度祈ったことか。
「神様助けて」「神様いい子にしてますから」「神様お願い」「私を殺して神様」
何度祈っても、心の底から信じても、あなたは一度も現れなかった。だから私は信じない。私を救えるのは私だけなのだ。
霊能者に電話で相談している母を、軽蔑の目で見ている自分。哀れだと、ああはなりたくないと思っている自分。そんなこと思う私が一番汚い奴だ。
霊能者は、きっと母の望む言葉をくれる。母の全てを肯定し、勇気付けてくれる。
電話を切り終わった後の母は、イキイキしていた。
「お母さんの今の職場が良くないんだって!新しいとこ見つければ運気はグングン上がるんだって!」
お母さん、それ、私も一昨日言ったよ。悪口だらけの職場なんかより、もっといいとこたくさんあるよって。
意気揚々とコンビニにタウンワークを取りに行く母を見て、自分の無力さを思い知る。
ああ、どこの誰かもわからない霊能者さん、あなたはすごいね。人の心をこうも簡単に動かせるのね。ずるいよそんなの。
コンビニから戻ってきた母は、楽しそうにパートを探す。「お母さん、子供のお世話できるかな?」うん、きっとできるよ。私は答える。
自室から父がやってくる。
「こんな歳で新しい仕事なんて見つかるわけない。探せるもんなら探してみなさいよ。」
そう呟いて再び自室に引っ込んで行く。
母の心がしぼんでいく。「そうよね、私みたいなおばさんに新しい仕事なんて…」
ああ私はどうしたらいい?誰に何を言えばいい?
スピリチュアルにハマる母、ネガティブに染まりきった父、ホームシックで泣いてばかりの私。
ここには弱い人間しかいない。なんて脆い集団なんだ。
せめて自分を保っていたい。昔の二の舞はもうごめんだ。自分の軸を失ったら最後、私は私を思い出せなくなる。
見守ってくれる人達が、いるだろ。
応援してくれる人達が、いるだろ。
そう言い聞かせてなんとか立っている。
それは、今、これを読んでくれてるあなただ。
あなたのおかげで、私はまだ立ってられる。
心の底からありがとう。