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もう

お父さん、お母さん。

あなたたちには、綺麗事ばっかり並べてきた。聞こえのいい、お手本言葉を選んで渡してきた。

別に、感傷に浸りたいわけじゃない。ただもう一度一緒に住む前に、覚悟したいだけ。家族だから、親だから、そんなことじゃ片付けられないからね。

一人の男、一人の女、そこから生まれた私、弟。
たまたま集まった四人のチーム名が「家族」だっただけだ。

いい子にならない、いい親にならせない。私たちは一人も欠かさず無理をしてきた。みんなみんな世間の掲げる正解に縛られて、口角をあげたり嗚咽を漏らしたり、もうそんなのたくさんだ。

埃を被った本当の顔を、見せてあげる。怖いから、怖がらせるから、ちょっとずつね。どんな目をするかわからない、それはごめん。

でもね、濁った目で笑いかけても、何の足しにもならないんだよ。お父さん、お母さん。あなた達が望む私は、あなたたちが本当に欲しい私じゃないんだよ。

好いてほしいでしょう。尊敬してほしいでしょう。今あげられるこの笑顔は、着色料でギトギトなんだ。

ずーっと騙して、ごめんね。やっすい感謝、うっすい優しさ。これが本物だと思っちゃったよね。

本当にごめん。私自身が綺麗に包んだ嘘をやすやすとプレゼントしてきたことを、悔やんでいる。

今日も味のない感謝をラインで伝えてしまった。こんなことをしていては、後悔しない未来なんて一生やってはこないだろう。

あなたたちを傷つけたくはない。だから、子供に野菜を食べさせるように、少しずつ少しずつ、小さく刻むから、私を見てほしい。

お父さん、お母さん。私はあなたたちに感謝していない。産んでくれてありがとうなんて、一度も思ったことはない。あなたたちを尊敬していない。あなたたちになりたいとは思わない。

でも、あなたたちを知りたいと思う。そして知ってほしいと思う。あなたたちが許すなら、隠した本音を見せ合いたい。

汚い汚い汚い核を、同じテーブルに置こうじゃないか。隠しているつもりでも、ヘドロの匂いが壁に染み込んでいる。

もう、いい頃でしょう。十分、大切に抱えたでしょう。あんまり馴染んでいるもんだから、切り離すのは痛いかもしれないね。

でも、私、見たいなあ。あなた達の苦しみの核を、私自身の憎しみの芯を。

「お互い苦労しましたねえ」

そう笑って焼いてしまおうよ。

抱きしめ続けた過去の煙を見る時は、私たちが初めて握手をする時だ。



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