恨みを越えたくて
26歳の私が、まだ学生の時。
実家は精神病患者の両親2人によって、暗い狂気が常に流れていた。父が狂えば母がそれを私に愚痴る。逆もまたしかり。
母『あなたたち姉弟のために離婚しないんだからね』
父『お母さん頭がおかしいんよ』
そんな日々のことを、本当は、水に流したい。
涙の中にかすかな灯りがともったら
君の眼の前で温めてたこと話すのさ
それでも僕らの声が乾いていくだけなら
朝が来るまで せめて誰かと歌いたいんだ
これは、サンボマスターの世界はそれを愛と呼ぶんだぜの歌詞。
心の奥底では、両親のことを、かわいそうだとずっと思っていた。助けてあげられたら、と思っていた。
でも、私は弱かった。
涙の中の灯りを見つけたくても、目を見る勇気がなかった。
あたためてたことも、どうせ無駄だと蓋をした。
ここで歌えなくても、いつかのために
他の場所で歌うこともできなかった。
何にもできない自分。
そんなに自分を棚に上げて、恨んだ。
こいつらみたいには、絶対ならん
その一本槍を大事に抱えて、毎日全てをにらみながら暮らした。
そんなのは、もう10年ほど前の話。
と、思いたいけど。でも。
まだまだ、奥底の心が、深く彼らを恨んでる。
どんな言葉もお前らには届かんもんな
私が泣いたら、迷惑そうにするもんな
家も学校も塾も、私が泣いたらみんな迷惑なんや
こんな気持ちを味わわせるために産んだん?
あーあ、産んじゃいましたね!残念!
本当に私が大事なら、産まないでほしかった
『そんなこと言ったら、親が可哀想よ!』
『産んでくれた親を恨むなんて、なんて親不孝なの!?』
『2人だって悪気があって、狂ってるんじゃないのよ!』
『家族は何より大事な存在なのよ』
どこかで聞いたような、清く正しい言葉が私を突き刺す。
**
なんでや、私は辛いのに。
全部愛さければいけないか?
全部許さなければいけないか?
家でも、外でも、自由に泣けもしない。
親を見てたら、そりゃ泣けないさ。
だって、あんなに醜い姿、見せたくない。
だから、平気な顔して、心の中で何度も何度もあいつらを殺すんだ。
そして、もちろん私自身も。
だって、私たち家族は、どこに出したって恥ずかしくないくらい、迷惑な存在なんだから。**
どうせ、迷惑。
この言葉をいつも背負って、ネガティブに、
慎重に毎日暮らしていた。
私は、10歳老けて見られるようになった。
昨日のあなたが裏切りの人なら
昨日の景色を忘れちまうだけだ
こんな風に、強くなりたいのに。
新しい日々を変えるのは
いじらしいほどの愛なのさ
僕らそれを確かめ合う
世界じゃそれも愛と呼ぶんだぜ
私のどろどろも、彼らのしつこい執着も、
愛なんだろうか。
あなたのために歌うのが
これほど怖いものだとは
そう、全てを捧げるのは、本当に、本当に
こわいんだ。
だけど僕ら 確かめ合う
今までの過去なんて なかったかのように
悲しみの夜なんて なかったかのように
歌いだすんだぜ
わたしは、弱い。
あなたたちを、信じられない。
でも、いつか。
あなたたちがいなくなってしまう前に、
過去なんてなかったように、
笑いあえたらいいな。