N◯Kのおじさん2人と私と無駄な時間
今日の夕方、仕事を終えアパートの駐輪場に到着したとき、異変を感じた。スーパーの買い物袋を自転車のカゴから取り出しつつ、辺りを見回す。
スーツ姿の男性二人がこちらを鷹のような目で見ている。
「NHKだ・・・!!」
パンパンの買い物袋を抱えて、私はアパートを後にした。どんなに不自然でもかまうものか。絶対に家を特定されないよう、近くの路地裏に身を潜めた。幸い、彼らは後を追ってこない。どうやら私の隣人との話の途中みたいだ。彼らの背中が見える位置に移動して、全神経を耳に集中させるが談笑しか聞こえてこない。しばらく隠れていたけど、なんだか自分の早とちりな気がしてきてた。
「5分以上たったし、もう帰るか」
そう思って再びアパートの前に戻ってきたとき、私たちの部屋の真ん前に彼らはいた。辺りをギロリと見回して、扉の前を行ったり来たりしている。
「やっぱりNHKじゃん!!」
私は焦った。だって、NHKはもう払わないと違法らしいじゃないか。
「10年以上見てないのになんで払わないかんのや!こちとら来月から無職やぞ!奴らが退散するまで意地でも家に帰らぬ。」
そうして私は、NHKおじさんたちが退散するまで路地裏で時間をつぶすことに決めた。
スマホは電池切れ、財布には現金ゼロ、パンパンにつまったスーパーのビニール袋。自転車は駐輪場に置いてきてしまったから移動するのも難しい。
「何にもできない・・無駄な時間・・・」
ぼけーっと地面を見ながら思った。やることいっぱいあるのにな、と。
そして、これまた思った。
「無駄って、なんだろう?」
所詮たまたま生まれて、たまたま今生きているだけの私に、無駄とか有意義とかあるのかな、と。
自分で勝手に無駄だの有意義だの言ってるだけで、ほんとはそこに良いも悪いもないんだろうな、と。
だからこそ、○×つけるんじゃなくて、私が楽しいとか嬉しいとか生きててよかったなとか、そんなことを思えるような時間の過ごし方をしたいな。
そこはかとなく小汚い路地裏で、思考が宇宙のかなた飛んでいきそうになったところで、時計を見る。30分経っていた。
「あほらし・・・」
恐る恐るアパートに帰ると、彼らの姿はそこにはなかった。
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