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どんなところにいてもちゃんと見つけるからね


黄色の歌詞カードをペラペラと捲る。
表紙のツルツルとは違う、ちょっと厚くてサラサラとした手触り。
勢いよく左手で捲ると手が滑って、パタンと右手の親指に当たった。

捲る音と当たる音、触らないと出ない音。
これがクリープハイプがくれた最初の音だ。

この黄色、尾崎さんの昔のブログみたいだな。
目がチカチカして目を背けたくなる。
黄色の紙に黒い文字、1番しっかり見える配色だ。
嫌でも目に入ってくる。
いつでも心に飛び込んでくるクリープハイプの歌詞にそっくりだ。



手元にアルバムがやってきたのに、いまの私には音楽がちゃんと聴けない。
パニック障害になって抑うつ状態が続いた結果、歌詞や音がうまく入ってこなくなった。

あんなに好きで、日常にあったクリープハイプが遠く感じてしまう。

聴きたい気持ちに反して、心と頭の整理がつかず、音楽を聴くことができない。
ただただ、歌詞カードを何度も捲っている。

小説も文字が滑って、何度も戻らないと理解できなくなってしまった。
すごいスピードで小説を読んでいた頃が嘘みたいだ。


だけどこの歌詞だけは。
絶対にこのアルバムの文字や言葉や色だけは、しっかりと心に刻み込めるようにゆっくりと読みたいと思う。


もう一度歌詞カードを開く。
ドキドキして手に汗をかいているから、表紙に触れた指がキュウと小さく音を立てた。


アルバムのタイトルは〝こんなところに居たのかやっと見つけたよ〟
家に引きこもって泣いたりしている日ばかりの自分には、本当にうれしい言葉だった。

悲しい時も嬉しい時もいろんな気持ちを見つけて欲しい、そこにいるんだと気づいて欲しい。
寂しいからこそ、認めてほしい。
そんな気持ちがまるっと包まれた気がした。


うまく言えないモヤモヤも、嘘をついて隠してる本音も、伝えられなかった気持ちも、本当の優しさも、見せられなかった甘えも、クリープハイプはいつだって、わかりやすい形にして言葉にしてくれた。
音にしてくれた。

そんなクリープハイプが今の私も、見逃さず置いていかず、ちゃんと見つけてくれたことが嬉しかった。


なんとなく死にたい夜でもこの歌詞カードなら、暗闇の中でもよく見えそうだ。
5時でも、18時でも、22時でも。
いつでも、どこでも、私はクリープハイプを見つけることができる。



私は1人だけど、みんなも1人だ。
クリープハイプもそれぞれだ。
ひとつひとつのパーツが集まって、クリープハイプになる。

君は1人じゃないからとかそんな嘘信じられないし、バカみたいだと思う。
だって、大事なときにそばにいないじゃないか。

だけどそのバカみたいな嘘の優しさを信じたくなる瞬間もある。
ひとりじゃないのかも、って縋りたい。
バカの優しい嘘に救われる時もある。

いや、無理か。
現実はそんなに甘くないかな。
そんなの綺麗事で嘘だ。
心のどこかで寂しさが邪魔をする。
バカになり切れない自分がいる。

みんな孤独で、寂しくて当たり前だ。
人なんだから。ひとりで、ひとつ。
ふたつがひとつに溶け合うほうが歪で、孤独よりもずっと怖いことなのかもしれない。



じゃあせめて、一つになれないならせめて二つだけでいようよ、なんて言ってみる。
つまり、それって君は1人だけど俺も1人だよってことだから。
この言葉は最大限の愛であり、優しさだ。
嘘じゃない、本当の優しさ。


クリープハイプはずっと変わらない。
いつもそこに居てくれる。
自分が迷子になっていてもそこにいる。

時々前にいてくれて、気がついたら横にいて、寄り道していたら待っていてくれる。
だから必要なときや、助けてほしいときには、私が見つけに行けばいい。
ゆっくりと、探しに行けばいい。
どこにクリープハイプが居たとしても、私はちゃんと見つけられるはずだ。
目印は眩しい黄色のジャケット。


深夜のライブカメラを見ながら、眠れないことや、変わらないことが、とてつもなく怖くなることもある。
iPhoneを握る手が必要以上に冷たく感じる。



だからこそ、私はクリープハイプを見つけに行くんだ。
変な声を聴くために、自分と向き合って、元気になって、会いにいく。

こんな不安の中に確かな幸せがある。
それが私にとってのクリープハイプだ。

見つけてくれたからこそ、次は自分で見つけたい。
やっと見つけたよ、と言いたい。


だからそれまでもう少しだけ、ちゃんと聴けるようになるまで待っていてほしい。
進んでも、寄り道しても、止まってても好きなところに居てくれていいから。


こんなに明るい黄色なら、どこにいたってすぐ見つけられる気がする。
夜道でも安全な色だ。安心できる。
怪我もしないはず。

この優しくて素直で嘘のない歌詞に音がのったらどんな感じだろう。
楽しみで仕方がない。

だから、きっと、すぐに追いつくから気長にその辺にいてね。


それじゃあ、クリープハイプ。
また明日 また明日 また明日 話そう。
音楽を聴く日を目標に、明日を続けていく。

iPhoneの向こう側から、愛を込めて。
地面に咲いたたんぽぽのように、眩しい黄色を胸に。





クリープハイプ、オリジナルライナーノーツ。
〝こんなところに居たのかやっと見つけたよ〟
(期限ギリギリ〜!間に合った!)

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