ロビーで仕事していると、看護婦Hさんが、周りを
キョロキョロみながら、何やら持ってきました。
看「あのさ」
私「うん」
看「ケーキ食べない?」
私「え?」
看「焼いてきたんだけど。。」
か、か、看護婦さんの手作りケーキ。
メイド、バイ、白衣の天使。
喜びで病院中をスキップして駆け回りそうな衝動を
必死に押さえます。
看「お口に合うかな~。。」
もちろん。絶対、合いますとも。
焼きすぎで真っ黒焦げでも、生で真っ白でも。
どんなのでも食べ切る自信があります。
看「はい、どうぞ!」
私「わぁぁぁぁい!!」
・・・私の目の前に飛び込んできたケーキ。
見た目はショートケーキ。
しかしクリームの色が
・・・
紫
・・・
こんな色、食物としてアリですか?
看「紫は高貴な色と言われててね」
ケーキに高貴さは求めてません。
看「ほら~、遠慮しないで。あ~ん」
『遠慮しないで』=『深く考えるな』
ですか。
普段なら、看護婦さんから「あ~ん」ってされると、
全身丸ごと看護婦さんにダイブしますが、今は後ずさり
してしまいます。
覚悟を決めて、かぶりつく私。
・・
う、うまい。。色は別として、味は完璧です。
私「う、うまいよ!」
看「そう、じゃ、私も食べよ~」
・・・絶食中の患者に毒味させますか、ふつう。
看「実はそれ、患者さんが焼いたの」
パードン?
看「プレゼントでもらったんだけど。。
私、嘘は言ってないよ?『焼いた』としか言ってないし~」
闇討ちに成功した野武士みたいな顔して言わないで下さい。
看「主語は『私』じゃなかったでしょ?」
私を守護して下さい。
看「不思議よね。。ケーキが紫なんて」
今すぐその患者、ここに連れてきて材料を
聞いてもらえませんか。
その晩、胃の調子がややおかしい事が気になりつつ、
床につく冬の深夜でした。