バランスと次作

生まれて初めて100点を貰った。
学校でも職場でもない。自分たちが作った作品にいくつも丸がつき、最後の最後に100点……。答えなんてないのに100点がついた。

不思議な感覚だ。

正直に言えば凄く嬉しい。嬉しすぎて自慢してまわりたい。
でもそれがどんなものか自分の周りの人間には理解して貰えない。
この世界で評価されることがオタクにとってどれだけ凄い事なのか。
多分、分かって貰える日が来ないと思うと……とても悲しい。

だからこうやってテキストにしてみる。
いつだってそうしてきた。嬉しさも悲しさも、自分の気持ちは全てこの白いセカイに残してきた。

もちろんついたのは100点だけじゃない。
85~42点一番下だと30点。

まさに人それぞれといった感じで点数がついた。
分かりやすく高評価とも言えず、だからといって駄作とも言えず、好きな人は好き、嫌いな人は嫌い、といったように人の感情に触れやすい「問題作」になったと個人的には考えている。本当なら誰からも好かれるような作品がいいが、残念ながら自分にはまだ出来ない。

そんな問題作の名前は「HoodMaker」。

この言葉に意味は無くて、とある文章をグーグル翻訳にかけて頭文字をとった造語であり、特に意味はない。

むしろ意味がないからこそ、この言葉に誰かが意味を見出す日が来ると願った。

その結果が実りつつある。

数年前。思い返せば全てを覚悟した日。自分の手にあるのは数枚の企画書を書く程度の力だけで、パッケージ完成へ向けて動き出した。

百円均一で買った鉛筆とらくがき帳。
それを昼休みに一枚は描く。
書いたイラストはバイトの子に見せ感想を貰う。
家に帰れば、小さな折り畳みの机に板を乗せた作業場で続きを描いた。

PCも2000円のジャンクで、左側のUSBポートに触れれば直ぐにフリーズする愛機。もちろん板タブもジャンク品。

出来ればいい。思いさえあれば進める。
始めはそれだけ。

でもそれ以上の問題は孤独であることだった。
自分が作る作品がどこへ向かっているか分からなかった。
凡作すれば報われない。
でも傑作にする能力はない。
だからといって無難な作品じゃ一本作って終わり。
それだと待ってくれた相方に申し訳ない。

ならばと考え、出した答えが自分の思いを全て作品にぶつけること。
でもそんなやり方どんな教本を読んでも答えは書いていなかった。
テクニックは教えてくれる。でもそれ以上はやってみるしかなかった。

進めば進むほどおかしくなっていった。おかしくなっていくと自覚しながらも前に進むしかなかった。

書いていると、書いている内容が現実と重なる場面が増え、意味が分からなくなっていった。ゲームが完成する未来を望み、その望みをゲームとして描く。願いが成就されながら、更なる願いに堕ちて行く。

作品が完成しなければ自分はもっと堕ちていける。作家としてもっと、もっと、深い所まで行きたい。

でも完成させないといけない。

そこで帰ってきた。

本当はあの先に行きたい。本番はあの向こう側にある。
そんな自分を押し殺して帰ってきた。

だからバランス。
バランスが大事。

多分本当に一人だったら完全に壊れていたと思う。
壊れていたらこんな嬉しさを知らなかった。
沢山の感想を貰う事なんてなかった。

ありがとうございます。

そして今度はもっと深い場所まで。
もっともっともっと…………もっと。

帰ってこられない場所まで。

でも大丈夫。
今は前よりもたくさんの声が聞こえます。

それを頼りに戻ってきます。

*上昇負荷がかからないことを祈りながら。

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