『大鏡』の酒飲みトリオ
今日は藤原済時の新暦命日ということで。
藤原済時はここまで名前が何度か出てまいりました。藤原実方の養父で、前回の藤原為任の父親です。
父は左大臣藤原師尹(もろただ/もろまさ)。
村上天皇の女御で『枕の草子』で古今和歌集を完璧に覚えていた逸話が残る芳子や、出家した兄弟がいます。
おそらく本来なら、長子である藤原実方の父貞時(定時)が嫡子だったのでしょうが、最終官暦が侍従なので、青年の頃に亡くなったようです。よって、実方は叔父済時の養子となり、済時の子供たちと一緒に育てられたと見られています。
この済時と言う人、見栄っ張りで酒好きだと有名だったよう。
酒好きと言えば、藤原道隆。類は友を呼ぶ。なのか、一回り歳の離れた友人だったみたいですね。
そして、藤原朝光。女性との噂も多く、酒好きのイメージはあまりないのですが、済時とは懇意で、歌を度々交わしています。また、晩年は、済時の妻の母と深い関係になってしまいました。これも、ひょっとしたら、済時との付き合いがきっかけだったのかもしれません。
『大鏡』には、三人で牛車に乗り、祭見物をした折りには、酒が進むと、車の簾をあげ、烏帽子も被らないみっともない姿で騒いで、多くの人に見られたとい話が残ってます。
この三人、なんと同じ年に亡くなっています。
長徳元年(995年)は疫病の大感染で大勢が亡くなった年でした。
ただし、道隆は糖尿病とみられているようです。
朝光は3月30日45歳、道隆は、4月10日43歳、済時は4月23日55歳。道隆は臨終の時、極楽で生まれ変われたら三人で酒を飲みたいと、呟いたとか。
参考:新潮日本古典集成『大鏡』