仲人の土曜、日陰の桜。

桜が散り始めた。毎年、娘と桜の花びらを集めに行くのを楽しみにしている。が、今年は娘が風邪をひいてしまった。「花びらはまた来年にすゆ」と言っていた。うん、また来年拾おう。と言いはしたが、花びらを一緒に拾うのは去年の春がいよいよ最後となるのかもしれないと思った。寂しいが、毎春これが最後かと思いながら桜吹雪の中で娘と過ごしたので悔いはない。上の子である息子で学んだのだ。子育てはいつ「最後の〇〇」が来るかわからない。最後の抱っこ、最後の泣き顔、最後の手つなぎ、最後の「ねえママ…」。子育てがいよいよ次のフェーズに入りつつある。なんだかしゅんとしてしまう。


とはいえ土曜は忙しい


結婚相談所は、会員のお見合いや入会面談のある土日が繁忙日になる。私の場合、面談や講座は自宅事務所でオンラインで行う。今日は朝から手帳術講座もあり、午後を過ぎるころにはぐったりとしてしまった。


夫が料理ができ、しかも上手いのは心の底から助かる。それだけで結婚してよかったと思う。本日の昼食は、たまごやら鶏肉やら野菜やらを寄せた、優しい出汁の饂飩である。義母が焼きおにぎりも用意する。疲れ過ぎて食欲ないわぁと言いながら大いに食す。

なかなかに至らない脳を使い・無駄に大きい身振り手振りで喋り・疲れたところにおいしいものをおなかに入れ、あとは寝るしかない。資料を読みながら寝落ち。そして寝癖がついた髪もそのままに、南のカフェへと自転車を走らせる。


私は九星気学の方位取りをしている。九星気学とは古代中国で伝承されてきた占術をベースにした風水学であり、方位取りは気学によって計算し割り出した吉方位へ移動して運気を上昇させる開運術である。知らんけど。まあ何のことはない、誰でもアプリで自分のその日の吉方位を調べられる。文明の利器が過ぎる。今日は南がいいと出ているので南なのだ。方位取りの何がいいって、アプリで方位を調べてその方位にあるカフェで食べたり飲んだりしたらいいだけ。吉カフェと呼ぶ。名前からして楽しいしかない。まあ運気がどうのはオマケみたいなもんだからさ。


本当は北が最高吉方位だが、
北には自転車で行けるカフェがない



カフェで何をするかと言うと


とはいえ、カフェでは仕事をせねばならぬ。カフェでは家ではできない仕事をする。ひとり合宿である。家では何かと誘惑も多いし、子どもも夫も話しかけてくるので集中できない。
カフェではスマホは触らず、小一時間ひたすらノートと向き合う。この場合のノートとは文房具のノートである。デスノートのノートである。今思えば、Deathが付きながら牧歌的かつアナログなツールである。私が書くのは、死んでほしい人ではなく、ひたすらにアイデアである。



この本を読んで実行しているわけで、手帳術のアイデアもここから生まれた。時に会員の心を動かす言葉にも出会える。仲人は、いくつものここぞという時に使える言葉を集めておくといいと思う。辛く険しい婚活道を歩む会員たちを支えるために。
さてページを埋め尽くすアイデアの中で、これイケんちゃうんと膨らませることができるネタは3割くらい。実現するのは2割くらい。実際お金になりそうなのは1割にも満たない。厳しい世の中である。でもやるしかない。やるしかないんだ。すすめ!とノッてきたところでアイスチャイがやってきた。ウマ。スマホを触らないルールにしているので、カフェではキャメラを使う。


黒革の手帳カバーとペンケースは7年選手。
まだまだ使い込む



しかし南。されどでなく南。南はこの気に入りのカフェがある以外は、私にとってさりとていい印象がない方位である。南なだけにカッカするというか。おそらく相性が良くないのだ。


やれば次第にわかってくるが、実際、私の最高吉方位の一の方位に行くと、たいていがっかりすることがある。一白水星は我慢の星だからである。吉方位は自分に足りないものを補うという意味があり、星は私に我慢と忍耐を強いていると言える。まったくもって迷惑な話である。


ひとりで花見


チラチラと桜を横目に自転車で帰路に着く。私の中で春はあけぼのではなく真昼間と夕暮れである。ちなみに冬が早朝なのは私も同じだ。

葉桜が始まっているものも多いが、日陰の桜はまだ満開であった。

年年歳歳花相似たり

ひとりでカフェに出かけたり、土曜にガッツリ仕事をしたり、こうして桜を見たり、単身で動けるようになった今年の春。毎年、春はやってくる。違う顔をしてやってくる。うれしいようなさみしいような。いや、さみしいがやっぱり、大きく勝っているかもしれない。



家に着くと、年に数回しか飲みに行かない夫に飲み会があるとのことで、すでに出かけていた。夕飯がすでに用意されている。娘がまだ本調子ではないのでメニューはポトフ。野菜がごろっと美味しそうである。夕飯作りに使われるはずのエネルギー、温存。助かった。今夜はブログを書く予定がある。最近、夜にパソコンを触ると、目がショボショボして辛い。
ポトフをあたため、パンを焼いていたら、息子がスマホを触りながら「ねえ、SHISHAMOのうたって、うれしくなるよね」と言う。私の知らないところで、さまざまな歌や人に出会っていく子どもらよ。間違いなく来年の春は、その先も春は、まったく違う春なのだろう。



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