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「ねえちゃん、すまん!」横山やすし
そろそろ年末年始の帰省ラッシュが話題になる頃。私も子どもが小さい頃は、当時の夫の実家がある大阪経由で私の実家がある福岡へ帰省していたものです。
ある日、帰省のために新大阪の駅で息子を抱いて改札の列に並んでいた時のこと。後ろから突然、「ねえちゃん、すまん!」と男性に声を掛けられました。どこか聞き覚えのある、それでいて初めて聞く声。「はい?」と振り向くと、スーツ姿の横山やすし師匠が立っておられて「すまんけど、ワシ、そこにタクシー待たせてて、時間ないのでね、悪いけど、先に行かしてもらわれへんかな?」とおっしゃるのです。幼子を抱えた私が改札でモタつくのでは、と心配だったのでしょう。
つい、「主人がお世話になってます!」と挨拶しそうになるのをぐっと堪えて、「どうぞ」と順番を譲りました。芸人だった当時の夫はやすし師匠をリスペクトしており、その破天荒な生き方まで真似したがるのを危惧していたほど。
しかし、私がたった一度出会ったやすし師匠は、「ありがとう、すまん。ありがとう」と終始紳士的でした。その後、いろいろとやんちゃなニュースを聞いても、私の中のイメージは変わらず。第一印象って、こういうことなんでしょうね。