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「あんたはいざりか?」石井均

セクハラだのモラハラだの、コンプライアンス絡みの論議がかまびすしい今日この頃。昭和から来たタイムリーパーがコンプラ違反満載のセリフを吐くドラマが話題です。昭和の時代も多少の自主規制は合ったものの、不適切という決めつけはなく、どんな言葉もただの日本語でした。

1978年の1月。初めてのドラマ撮影で上大崎の目黒スタジオに入った私は、ペーぺーの新人らしく緊張しておりました。控室に入ってこられる皆さんはどなたも先輩なので「おはようございます!」と挨拶をしていたのですが、ベテラン喜劇俳優の石井均氏は私の姿を見るなり「あんたはいざりか?」とお尋ねになったのです。一瞬、何を聞かれたのか分からずフリーズしていると「いざりやなかったら、立って挨拶し」と、笑顔で朗らかに説教してくださいました。

その時の私は、椅子に座ったままだったのです。「いざり」は今ではいわゆる不適切な言葉で、言い換えるなら足の不自由な方でしょうか。それからは誰が見えても立って挨拶を続けていましたが、出前の丼を下げに来たお兄さんにも立って挨拶をしていたら「見境いなしか」と笑われました。敬意の姿勢を教えていただいた、懐かしい言葉です。

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