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ヒーロー✕ヒーロー

 伊賀市を舞台とした架空のご当地ヒーローの物語である。

 伊賀市内ではいたずらや誘拐などの事件が発生していた。その事件を起こさせている犯人は布引山地の山中に潜む悪の組織「Ao」の仕業である。そこで伊賀市は表向きにはヒーローショーを営み裏側では悪の組織と戦う「友生会(とものかい)」を結成し、昼間は興行としてヒーローイベントを行い、夜間は悪の組織と戦う日が続いていた。

 

仲野鎮はヒーローショーを運営する友生会の営業部第二課所属の社員であり、二課では昼間のヒーローショーを担当しており、先月まで第一課の夜間を中心とした悪の組織の「Ao」と実戦で戦っていたが、現在では舞台に立ち観客の前でヒーローショーを行っている。最前線で戦うヒーロー担当は5人いたが、女性隊員の一人が育児休暇中であり、また鎮は、実戦現場を仕切っている一課のリーダーである今野衛との衝突を理由に異動して、現在はヒーロー隊員は3人態勢となっている。衛は一課の課長でありヒーロー担当と後方支援担当を求めているポジションにある。一課は治安維持活動として出動する機会が多いほど支持者や自治体からの補助金で営業成績につながる。一方二課はヒーローショーやイベントによる営業によって利益を出しているので地道な営業活動が必要になってくる。

 

鎮は表舞台でもヒーローとして舞台に立ちたいと活躍の場に出られるよう二課のリーダーに懇願したが、叶わず裏方の仕事に就くことになった。鎮はふて腐れて仕事に対してやる気が失せたが、夜間帯の仕事がなくなり夜をゆっくり過ごせられることを前向きに考えて過ごすことにした。自分の時間が増えたことによって充実した日々を過ごす反面一課のリーダーの衛のことを考えると内心がむしゃくしゃする。リーダーよりも目立った活躍を一度行ってしまったことや、戦闘の作戦に意見してから不仲になったことを思い返して自分のしたことを正当だと言い聞かせている。

ある時、衛のことをギャフンといわせる方策を考えているときに、「敵の敵は味方」という考えが出てきた。自分にとっての敵は衛だ、衛を含めた一課の敵はAoだと。敵情視察を行い相手の思惑と自分の考えが合致すれば、衛を追い込むことができると考えた鎮は有給休暇を取り布引山地にある敵の本部に足を運んだ。

 

鎮が山地の中を歩いていくとAoの戦闘員に遭遇しAo近づいた事情を話したものの友生会の一員だとばれると、強引に本部へ引っ張られ幹部の前まで連れていかれた。

「貴様は友生会の実戦部隊にいた確か5人目のメンバーではないか。なぜここにいる!」と幹部が語気を強めて鎮に問いかける。

「実はあなた方とわたくしとで内密に話したいことがございます。うちの実戦部隊をギャフンといわせる作戦を練るために足を運んだ次第です。どうか話を聞いてはいただけませんか?」と鎮が申し訳なさそうに控えめな声で述べると、

「ほう、我々がターゲットではなく、身内に対して何か仕掛けるのだな?少しだけ相談に乗ってやってもよいぞ。」と幹部が引き受けてくれた。

 

鎮は幹部に衛たちへの攻撃よりもまず、Aoの目的と実状を尋ねた。

「我々は生まれ育った環境がほかの人々と違う。だから悪さをするしかないのだ。」と幹部は直球に答えた。

「1年前に双方でとり決めた市街地戦と重火器を使用した戦闘の禁止のおかげで武器の費用を抑えられているものの資金は潤沢とも言えない。」幹部は悪の組織Aoの懐事情まで話してくれた。

鎮は意見を整理して「つまり周りの人々に認められて、お金も稼げられる状態になればベストということですか?」と聞き返した。

すると幹部は「したくてもできないんもんね。」とボソッと答えた。

鎮は幹部に対して一つの提案をした。「我々のヒーローショーで働きませんか?」幹部は目を丸くした。

「冗談だろ。第一受け入れてもらえるわけがない。」

鎮は「一般のパフォーマンスを行う団体として紹介しようと思ってますけど。」と話を進める。

「悪の組織Aoは休止して、クオリティの高いパフォーマンスを提供できるヒーローショーを作ってみませんか?」「そして稼げる表面上悪の組織として活躍すれば、悪さをする必要がなくなりますよね。」

この提案に幹部は「このことを首領に進言してみる。」と前向きな発言。「和平になるか現状維持になるかは首領にかかっている。確約はできないがよいか?」と鎮に確認すると

「構わないですよ。でも悪さをしたら容赦しないからね!」と明るく笑顔で答えてAoの本部を後にした。

 Aoの幹部との会談を行った2日後、友生会のヒーローたちとAoの戦闘員との交戦があり、その現場に鎮は足を運び仲間にばれないようにAoの戦闘員と密会し首領の考えた結果を聞いた。

「前向きに検討している。どうか友生会で活動できるよう話を進めてほしい。」と戦闘員から返事を聞けた。

「ではまた後日採用についての連絡をするのでよろしく」と鎮は戦闘員に伝えて速やかに別れた。

鎮は確信した。これから一課の衛に復讐ができると笑みをふくんだ。

つづく

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