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ブルジョア

 バイト先のスーパーでレジを打っていたら、おっちゃんが会計に来た。
腕に250mlの牛乳瓶を5本抱えていた。おっちゃんは牛乳を見つめながらおもむろに言った。

「これあんま売れんやろ」
確かに、他の飲料より売れてはいない。
おっちゃんは続けた。「だって高いからや」
うん。高い。牛乳瓶1本で250円。同じ値段で1000mlのパック牛乳を買うことができる。

「僕みたいなブルジョワしかこんな牛乳は買えやん」
去り際にブルジョア宣言をしていったおっちゃんのジーパンは、チャックが全開だった。

”ブルジョア”という言葉を久々に聞いた。
最後にこの言葉を聞いたのは、フランス革命の特集をテレビで見ている時だった。ブルジョワジー(ブルジョワ)とは市民階級を意味する言葉で、市民革命の中心勢力になった人々……。現在では有産階級を指すという。

このおっちゃんがブルジョワだったかは分からない。
市民階級であることは確かなのだが、チャック全開かつ皺くちゃの野口英世と北里柴三郎をトレーに出して来る人は有産階級と言ってよいのか甚だ疑問だった。



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