彼女を透けたオウム返し (大森靖子さんの話)
渡さなかったファンレター。レターセットまで買って、メタモンのシールを貼った散らかった文章のファンレターは、未だに幽谷霧子のファイルに挟まっている。
なぜならとても恥ずかしくなったから。せっかくいい音楽いただけて、いいもん(ナナコレシール)貰えたのに、泣き散らかして息絶え絶えで音楽の赤ちゃん的なことへ泣き散らかしてきたのです。ワタシは。
ワタシの音楽は今全て受け売り。それはとても環境のおかげ。ワタシは今、限りなく無料で巨大な音楽をやらせてもらってるから。
無理やり貰ったものもあるし、それが今は1番美しく嫌がってるんだけど、もらいに行って後悔したものもある。羞恥中の羞恥みたいな。ワタシだけのワタシは現在制作中、大森靖子にハマりすぎてvoid風ミュージック(笑)になりそうでビビってるからこの前絵本を読んだ。もっといろんな曲を聞こう。いやそれは違う。
ほんとのワタシなんて、10代じゃ見つけらんないと思ってるし、そんな達観しちゃったらあっという間に大人になってしまう。鏡のように、10代の大前提、なのかな。
そうです鏡、仙台PARCOにてのね、「大森靖子超天獄」に行ってきたのにまとまらないのでここでも泣き散らします。クソガキがよ。
ワタシの昔話と主観を含む長編です。主観しかないので、覚悟して読んでください。
最後の曲のくだりはワタシにとっては大切だけどお前にとってはくだらないので、読み飛ばした方がいいのです。
1曲目が「マジックミラー」でした。
演奏開始十何秒が、大地みたいって思った。天高くかき鳴らされたギターさんは、すごく誇らしげだったし、誇らしくおもってしまった。
この曲はワタシにとってとても意味のある曲。サビが、10代ワタシすぎるのさ。
ここで言う君はワタシにとって、憧れのひとでも先生でもあって、おともだちでもあります。
憧れの人が作る魔法の音楽や呪いの絵は、全部もちろんブサイクでボロボロじゃないけど、ブサイクでボロボロだった時間を通り過ぎて出来上がった温かいものなので、あなたの作ったものがこんなところのこんな心に届いて、新しく組み合わさって、永遠に終わることはないって思いながら聞いています。違かったらごめんなさい。
でもこの歌、ワタシのこと歌ってる?きもちいね
2曲目はミッドナイト清純異性交友。
こういう青春になりそうな予感がした、18歳までだけど。淡い夜の隙間あたりで、アイアムシックスティーン、まだまだシックスティーン。
ワタシを指さす大森さん。多分そうで、多分違う。1段高いところまで迫る大森さんが、涙と鼻水でぼこぼこのワタシを指さしたような錯覚。ワタシは大丈夫完璧な彼女をずっと見つめて、目が。
これが本当のミッドナイト清純異性交友か...。
3曲目VOID!!!!!!!!
「もう1回やらせてえぇぇ!!!!!」から聞けると思ってなかった。神様みたいに綺麗だった。神様みたいな歌詞だった。ロックすぎるけど大人だな〜ってすごく思った。出会いってそういうことか〜とかいうね。生きててよかった。
何もできない、を介して。
4曲目はあまい。
何かを諦めたように歌ってる感じだった。ワタシはそう思う、お前らがそうじゃなくても。
ただひたすらにおんなのことラブソングを重ねただけではない、記憶をもつ私は醜いと、責め立てている気がする。ワタシはそう思う、お前らがそうじゃなくても。
5曲目はアルバムから。ひらいて。
ワタシ以外の高校生が大半は共感する歌詞だと思っている。ワタシも大変すごくとても共感しているけれど、ワタシはもっともっと幼い場所にいたい。
本当にさいあくの歌。もう二度と聞きたくないくらいに。でも本当に大好き。気持ち悪いくらい、誰も知らない奥底を半分浮き出しにしてくる。大切だと思うのは、そのもう半分に触れる寸前まで生きること。聞きたくないくらいに大好き。
あああ!!!
6曲目もアルバム、天国ランキング。!!!
エネルギッシュに、でも前二曲の憂いを全部うたったうえで、また新しく絶望しましょうというやつ。死ぬときに思い出したい曲。
この1曲を提示されて、ワタシはこの曲をこのとき初めて聞いたんだけど、来てよかったなって思った。1日、1時間に1本しかない電車の時間間違ったり、お釣りを貰い忘れたりしたけど、ワタシが落としたと勘違いしてしまう程綺麗なメロディ、と書いて天国と読んでいるを、全部を思い出して、全部を忘れてしまう。
そんな音楽だな、と7曲目。
7曲目、え、即興!?!?!?!?!?
音楽すぎ...いや、音楽すぎる。すごく悔しかった。リリースイベントの即興、染み渡るひとつひとつのワード。寒いけど雪はまだ。降ってよ。辻褄が合うことをおそれないで進む音楽音楽音楽!!!!!
えツイート見るまで即興って気づけなかったけど泣いちゃった。鬼のような肌のツッパリを感じた。
8曲目、パーティドレス。
にわかなのでお初に聴いた。素敵な曲。地を踏みしめるように、唇を噛んで聴き惚れた。ジジイとヤったことはないけれど、貰った金でドレスを買ったこともないけれど、ない苦しみを錯覚以上に植え付けてくるくらいには物語すぎた。
大量の苦汁を飲み干して笑う主人公の女性は、瞬間的に誰よりも美しくなっていて欲しい。瞬間がいい。健康になれ。
最後は死神。
死神の前に、ワタシの話をさせて。あの時間を血肉にしたい。ごめん読み飛ばして。
ちょっと自語り。地続きの大森靖子の話。死神は、ワタシが初めて大森靖子の文字を目に焼き付けた曲。カラオケの何とかでコレサワと大原櫻子さんと混同していた大森靖子を、畏怖の象徴として持ち上げた曲。
愛しの歌姫、電子でうつし世の少女、そう、花譜ちゃんのcover動画で知った。
これが伝説の死神カバー。
彼女の、最後の湧き水に縋るかの如くか細いそしてそして生命と表現の世界に、ワタシは惚れ惚れして、そして涙して聴いていた。中二とかの時。
同年代の少女がここまで生命をむき出しに歌うのか、ととても驚いた。
嘘にまみれて汚く堕ちてゆく歌詞の主人公が、ゆっくりサビに向かって立ち上がり、足を踏ん張って、体中の水分を全て殺して唱え叫ぶ。
さらに驚いたのが原曲聞いた時だが。
なんだこいつ、というのが正直な感想。可愛いのか最強なのか分からない、言うなれば意心地の悪い歌声。花譜ちゃんのものと、全く別と言っていいほど、畏怖的嫌悪感。凄まじいものを感じたものの、ケツの青いガキには刺激が強く、ラスサビ前で動画を閉じた。心臓が壊れちゃったみたいだった、その事実から目を背けて数ヶ月数年。
大森靖子が大炎上した。去年だわ。
音声は一応聞いた。昔昔に聞いたきり、もう二度と聞かまいとしていた声に似ていた。
もうこの人の音楽は...と思いかけたが、ワタシは彼女に心臓をぶち壊された経験があったため、世間が許さなくとも、フェードアウトしたら絶対に会うことを決めた。怖かったけど。すごい怖かった。
時系列が狂うけど去年も今年もその前も地獄日々が続きがちだった。ワタシが思春期に突入したからだし、大きな地震もたくさん来たからだ。
もう詳しく思い出せないけれど、母との関係がぶち壊れて、父方の祖母が出ていった。
ワタシはその半年前から、祖母が大好きだったピンクが毎日嫌いになっていった。
母親が丸く禿げたので、絶対に嫌いにならないことを心で約束した。どれだけ嫌いになりそうなくらい叱られても、自分のせいにすることでことを凌いだ。肝心なこと、反省するのも忘れていたので、日に日にワタシは悪い子と昇華していった。
母親は大好きだ。ノリがいいしいい趣味をしているから。思慮深陰キャだから。母親だし。
前にnoteに書いたように、初めて夜中に暴れた頃の1ヶ月前くらいに神聖かまってちゃんに出会っていた。その時点で悟れさえすれば、ワタシはもっと上手く眠れたはず。まあいいや。
その前前にMAPAとゆっきゅんきゅんには出会えていたので、土台は整った。
花譜ちゃんの武道館ライブ、見れなかったけど狂担当のツイートをみつけ、ワタシは心して大森靖子に出会いに行った。
ファン歴2ヶ月で草。
大森靖子の靖子の読み方、せいこだった。今までやすこって呼んでた。
彼女の作る音楽は、ワタシの精神を救うのではなく、不屈の魂を連れてきた。ワタシには、5月にできた魂のもとがあったのだが、それは恩師がワタシに分け移してくれた蝋燭の炎だったかもしれないが、それが彼女との出会いで不死のものとなりつつあった。
なのでワタシは、大森靖子をせいこちゃん、ではなく大森さんと呼ぶのだ。
死神の感想をやっとここから始めます。づみませんごめんなさい。
「履歴書は全部嘘でした」と聞こえた瞬間、一瞬本当に胸が高鳴る音が聞こえた。おかしいけど。ギターのリズムに刻まれて、最後のロックを惜しみなく...とか思っていたのに、大森さんはギターを置いた。
普通に困惑した。アカペラ、とても嬉しいけれど、もうギター聞けないの寂しいなって思ったりしてしまった。ギターサウンドちゃんにお別れも言えない。でも嬉しい!直に大森靖子だ!!
以前おバイオリンのお先生(ボブで可愛い)と川について弾いた時、「川は水だけど、地面があってこその川だよね」とだいたいこんなことを仰ってて、ワタシは当たり前のことにすごく感激したんだけど、死神、そんな感じの歌だった。
生きている毎に感じてしまう弱さを、滅多刺しにして天高く掲げたけれど、そして彼女はそれを小声で否定したが、その浮かんだボロボロの歌はしっかり地球に結びついていた。
...やっぱ変だな、言葉にすると変だ。言葉にできないって言葉、絶対に使いたくなかったけどそれくらい強大なエネルギーをさも当たり前かのように携えて、私たちを睨みつけ、握りつぶし、そしてひとりも欠かさず肯定しきった。すげえ...、と大号泣した。
もちろんワタシは、大森靖子さんが歌おうとした全てのパワーの自分分すら受け止めきれなかった。修行が足りないなって感じた。もっとおんがくしたいな、音楽して音楽して音楽して、音楽の向こう側でまた出会いたいなって思った。ってことを曲が終わった静寂の中で、圧倒されっぱなしでスカスカの脳みそに垂れ流した。
ミニライブが終わった。
写真は撮らなかった。不安だったから。もっと力強く地面を踏めたら並んで撮るんだ。
てことでお渡し会!ここでも無様に大号泣。前に並んでいたおじさまの次がワタシで、たんと初対面の対応してくれたのがなぜだか本当に嬉しかった。
ワタシは大森さんに、さっき言った魂への話がしたかった。でも、言葉が上手くまとまらなかったので、魂を大きく広く彩る音楽、についてお話した。
「あなたのおかげで、音楽毎日楽しいし、でも悔しいです。」ってね。たくさん練習してきたのに、何回も言葉を詰まらせた。涙が止まらなかった。
大森さんはワタシの目を見て、他人のお母さんのような顔で頷いてくれた。とても温かい時間だった。ワタシは今までのあなたの1部をそっくりそのまま返しただけです。脳がないのに。やさしい声で「受け止めました」って仰って頂いた時、パって光が舞ったような気がした。また会いましょう、って言ってくれた。彼女と本当に音楽で出会うためには、修行しかないとまた思った。音楽すごい。
大森靖子が身体を震わせ魂を残した仙台市からは、イベント終了20分後には電車に乗って出ていった。
街を歩く人々はみな、大森靖子がこの街に魂を残したことなんてまるで知らないので、いつどの瞬間も同じ顔で歩いていた。ワタシは、そんな人混みの中で、ちいさな声で、ミッドナイト清純異性交友を歌った。この歌は、寒い外で歌いたくなる。
寒さが一層に増して、意味をなさない気合いミニスカを貫通した。バスストップから睨みつけた仙 台 駅 のオレンジの文字が、内側からこびりついて離れない。
人を愛すること、今この世を生きること、生き残ること。知らない街の人の限りなく一瞬を見つけてしまう大森靖子さんをワタシは、引きづり回してワタシのものにしてしまうのだろう。そんなことを許さないで欲しい。
だけど、ワタシが無理やり等身大をやめてしまうまでそれは許して欲しい。そしてまた、情けなくもチュートリアルが始まったワタシを、もっと遠くの世界で笑って欲しい。けらりと。
頂いたシールは、いつか自分のバイオリンを買ったらケースに貼るのです。