一人が恋しい
一人の時間がないと生きていけないけど、生涯一人で大丈夫なんてことはなくて。
今のように心がざわつく時は、誰かにギュッと抱きしめてほしくて。
「だいじょうぶだよ。一人じゃないよ」
なんて、何の根拠もなければ非理論的な他人の言葉が欲しくて、恋い焦がれて。
でも自分は知っている。それが叶わない事。
普段から人との接触を避け、後回しにして、自分を最優先してきた自分は、人から何かを与えてもらえるなんて思っていない。そんな資格もない。もとより、世界は自分だけに優しくはない。
理性ではわかっている。なのになんで、こんなに他人が恋しいんだろう。
人としての本能?
いっそ、本能だと思うのもいいかもしれない。そうすれば理性も納得させられるかもしれない。子孫を残すという行為において、他人を求めることは必須だから。
それを普段から放棄しておいて、都合がいい時だけ、母親が赤ちゃんに与えるような無償の愛をほしいなんて、ほんとどうかしてる。
本能なら仕方ない。この気持ちは一過性のものだというのも経験則で知っている。治まらない嵐なんてない。
今は人が恋しいバイオリズムなんだな、と思って過ごそう。そのうちまた一人の時間が恋しくなる。その時を心待ちにして。
一人、体をギュッと縮め込む。