つぶめき29


ふと デパートの催し物で見かけた
懐かしい黒電話


子供の頃 友達の家で
よく電話ごっこをしていたんだ
つながっていない電話線は
その頃の私たちを 未知の友達へとつないでくれた


ダイヤルを回して 定位置につくまでのあの時間
誰が電話に出てくるのか 期待感と不安感を募らせた
ダイヤルが戻る あの音
聞いていて どこか安らいだことを憶えている
今はただ それが愛おしい


そんなノスタルジックな思いを馳せながら
目の前にある 電話線のつながっていない
でも 誰かにつながっているその黒電話の
ダイヤルにそっと 手を伸ばす