暗い暗い夜に
今日もまた、あの人を探しに夜の街に出かける。いつもの服、いつもの指輪、いつものピアス、いつもの化粧…。
あなたはいつも違う格好で、違う顔で、違う声。だから探すのが大変なのよ?
「…でも、好きだから、会いたいから…」
だから私は一生懸命探すの。
準備を終わらせて、いつもの時間に家を出る。
「今日は会えるかな」
昨日だって、一昨日だって、その前だって、あなたは約束を守ってくれなかった。でも大好きだから、約束を破られてもずっとずっと探すの。
「…あれ…」
いた。あなただ。やっと見つけた。
「あ、あの…っ!」
声をかけたかったけど、他の人と一緒にいた。話しかけづらいよね。しかも、女の人。
「…約束、守ってよ…」
私から離れていくように人混みの中に紛れていく。そんなあなたの後ろ姿を目に焼き付けるんだ。きっと、これが最後。もう諦めてしまおうか?
「…大好き」
…“でした”。
あなたがいないなら私はどうすればいい?
「…追いかけてくれる、かなあ…」
試してみようか?
「大好きだったあなたも、この街も、私も、全部全部ここに置いて逝くね」
さようなら、大好きだった人。