レイジーなショートテンパーは何寮ですか

オーストラリアに来て、二つ目の職に就いた。
週3で一日せいぜい6時間ほどの労働だけども仕事をしているということが大事。フレンズの一話でレイチェルに「みんな仕事してるの?」って聞かれたモニカも「そうやって生きてんのよ」って言ってたし。油田とかを持ってない限りそうやって生きていくしかないよね。

オーストラリアでの前職は野菜を扱う工場での作業員だった。機械のオペレーターをしていたけど効率という概念がない職場だったから、待機時間の方がはるかに多くて実質の労働時間はぎゅっとすると3〜4時間くらいなのに12時間くらい拘束されたりしていた。
工場で働くということは必要なプロセスだったとはいえ無駄が多すぎて絶えずイライラしていて感情の制御もうまくできずに、自分の側頭部を両手でポカポカ叩きながら「あ〜イライラするイライラする」と早口でぼやいたりしていてやばかった。

そんな会社から一転、カフェのキッチンハンドとして雇ってもらい、日々鍋を洗いとんでもねぇ食べ残し方をされた皿を洗い野菜を刻み床にモップをかけたりしている。非効率な動きをする作業者に嫌気がさすことも訳のわからないぶっ壊れ方をする機械ともおさらばして大分ストレスが軽減されているけれどそれでもやはり人によって仕事をする具合は違うから大なり小なり不満が出てきてしまっている。ギャルが言うとこの今日のシフト最強みたいなのが生まれている。最強があると言うことは同時にそうじゃないシフトもあるわけで、今日は"そうじゃない方"だった。

それはテメェの仕事では?と思ってもわたしは英語がまだまだ達者じゃないので反射的に英語にして口から出すことができない。かろうじて「これわたしがやった方がいいわけ?(最強シフトでは他の人がデフォでやってくれる)」と言っても「うん、今ホール忙しいから」と言われると、あっそう、みたいな顔をすることしかできない。心の中では「テメェは知らないかもしれないがわたしも忙しいが?」とめちゃくちゃバチギレで煽ってる。英語が分からないから言えないけど。くっそ。
「ゾーイとアナベルとダイアナは一度もわたしにその作業やらせた事ないけど、それは本来ホールの人の仕事じゃないの?」とかも心の中で言ってる。英語でなんて言えば良いのか咄嗟にはわからない。くそ。
スムージーのコップの汚れを少し水ですすぐだけのその作業が生まれるだけでイライラしている自分を、ちっせえな、みっともねえな、とも思ってる。
お湯を張ったバケツにぼっちゃぼっちゃ水飛沫を上げながら投げ込まれるカトラリーの音を聞きながらやはり少し腹が立っている。


ホグワーツに入学したらわたしが入る寮はハッフルパフだな、と思ってた。日本語でも咄嗟に喧嘩をふっかけたり、ふっかけられた喧嘩を買い叩く反射も胆力もないし、何事もフェアがいいと思っていたから、突出した才能や能力はなくともハッフルパフに入ってフェアプレーの鬼になって日の光が入る地下の談話室で穏やかな7年を過ごすんだ。地下だから嵐の夜でも静かだし、調理場が近くて食事時になるといい匂いがするとかも聞いたことがある。すごいいい。勇猛果敢で行動力のあるグリフィンドールは魅力的だけどわたしはそうはなれないから、波のない日々を愛して魔法を学ぼう。

仕事終わりにハッフルパフってどんな寮かを改めて調べてみたら、寛容で忍耐強く苦労を苦労と思わない、勤勉、献身、忠誠、フェアプレイの精神がどうのこうのとでてきた。
おいどんは原作読了してるわけでもないしハップルパフに対する解像度そんな高くないけど、でもたぶんだけど、こんな、コップを一度すすぐすすがないくらいでイライラしている人は寛容ではないよね???
実際にドンぱちやらないだけで心の中で自己中心的な憤怒の炎が轟々に燃え盛ってる人を穏やかとは言わないね???
なんか、ハップルパフに対してすごい思い違いをしてしまっていたなと思った。そもそもおいどんが言うところのフェアでいたいって、自己分析して考えてみるとたぶん誰かの怠惰や齟齬とか思いやりの欠如によって自分が不利益を被ることが許せないってことなんだよな。怠惰かどうかを決めるのもわたしの価値観によるものっていうところもやばい。要はわたし基準で損得勘定をバチバチに働かせている。フェアってそういうことじゃないよね、ヘルガ・ハッフルパフさん。しかもおいどん地道な努力ってすごい苦手なんだよね。大分前に買った賢者の石の原文6ページしか読んでない。苦労したことはすごい大変だけどすごいちゃんとやってすごいえらいんですけど!!ってクソでかい声で気心知れた人に話しちゃうタイプでもある。勤勉…?苦労を苦労と思わない…?

組み分け帽子はその人の特性もそうだけどなりたい姿を尊重して寮を決めるとも聞いたことがある。組み分け帽子の情状酌量の元、ハッフルパフに入れたとしても一時的にめちゃくちゃ嫌われるor周りに対する嫌悪感を猛烈に感じるターンがありそう。寛容な人の寛容さから漏れてしまうのは怖い。


働かないと生きていけないし、そんなに他者の働きぶりに文句があるなら開業して自分でルール作れってなるけど円安円高もいまいち理解してないおいどんにとってはそれは最適解ではないし、やはりその場への適応力と(今は英語力と)寛容さを身につけてストレスのセンサーを減らすしかない。センサーってどうやって減らすんだい〜??とりあえず口に出すと全部嫌な感じになってしまうからそういう時は心の中で一人称を"おいどん"にするっていうのだけ前の職場で編み出した。あからさまに雑用っぽいことを投げられた時に「それもわたしがやらなきゃいけないわけ?」が、「それもおいどんがやるんですかー?」になる。雑魚っぽくなっていい。



ハッフルパフに入れてもきっとちまちま真面目に勉強し続けるとか出来ないだろうけど、どうにか頑張ってナマケモノのアニメーガスになってナマケモノとして動物園に就職する。

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