思い出すそばから恥ずかしくて
自分が過去にしでかした愚かな言動を急に思い出して居たたまれなくなるほどの恥ずかしさに襲われることはないだろうか。人によって、恥ずかしい気持ちが襲いかかってくる強さは違うかもしれない。また、襲われる頻度も違うかもしれない。
しかし、多かれ少なかれ誰しもが時たま味わってしまう嫌な気分であり、逃れがたい人間の感情の乱れの一つであろう。
そこで、そんな恥ずかしさに襲われた時には、どんな対処法があるのか、隣の家の若後家さんに聞いてみたところ、くらくらするほどのお色気を辺り一面に撒き散らしながら、どうにこうにも悩ましすぎる声色で、
「そんな昔の恥ずかしいことより、これから一緒にさ、もっと愚かで恥ずかしいことをやりましょうよ」
なんて言われて迫られて、私もついついその気になって愚かな行為をついうっかりというか、結構まんざらでもない感じでやってしまうのが人間という愚かな生物の性なのである。
つくづく自らの愚かさを思い知り、自嘲と反省をすることしきりに、陽が落ちて薄暗くなりかけた住宅街の道をとぼとぼと一人で歩いていると、同級生で風紀委員長を務める鈴木真梨子が向こうからやって来た。私は、ふいを突かれたようなこの偶然の出会いに驚いて心を乱してしまい、少し緊張気味なぎくしゃくした歩き方になってしまったようだ。
そんな私を、鈴木真梨子が不思議そうな目で見ているので、できるだけ平静を装いながら、
「今日はまた一段とお美しくてございますわね真梨子お嬢様」
と、褒め讃えてみたところ、風紀委員長の鈴木真梨子は呆れたような顔で、
「そんなバカなことを言っていると、後で急に思い出して恥ずかしくて居たたまれなくなるわよ」
なんて、注意してくれたんだよね。
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