ご近所奥さま懲罰隊! プロローグ(口上)
さてや諸君
既に聞き及んでおろう
かの伝説の大入道の我らのもとに刻一刻と近づきしを
大地を踏めば
恐るべきかな閻魔の地獄にも轟かん響きをたてつつ
またたく間に千里万里を駆け抜け
疾風のごときの素早さで
今や伝説の大入道の迫らんとす
その姿
見上げれば高層楼閣のごとく
雲を突き抜けんばかりにそびえたち
ずしりと重き鉄塊のごとき躯体を備えん
大入道の走れば
足もとに建ち並ぶ家々を
ミニチュア模型のごとくに容赦なく踏みにじり
行く手に連なる大山
山脈を
次々に蹴飛ばしては砂塵と散らし
大河の水流
天の果てまで跳ね上げん
さらに腕を振り上げ下ろせば
たちまちに大旋風おきて此処かしこに幾つもの竜巻生ずる
だが諸君
しばし冷静になりて考えよ
その走り
その力
この源は果たしていずこより来たりしエナジーか
きっと一切皆目見当がつかぬはず
されども何も気に留めることはなし
ただただ漲る強壮と絶倫の極まりと
それをのみを知ればよし
そのエナジーたるや
これを我が身に導き入れば
全身すぐさま力の満ちて溢れ
問答無用の力強き前進
さらには目にも留まらぬ早業なる後進
前へ後への果てなき連続駆動
どこまで繰り返し続けても止むことなし
まさに驚天動地
震天動地の超高出力動力機関
すなわちウルトラスーパーハイパワーエンジンとはこれなり
行く手を塞がんとせん偉大なる遮断膜をも突き破り
かまうことなく通り抜けての快楽極楽の境地
そう
有史以来の長きに渡り
途絶えることなく言い伝えられし大入道の
破壊と持続のエナジー
今まさに我が身のものとなる
おうおう
お題目はこれほどにて終えようぞ
ただいま我らが陣に戻り着きし伝令の
懐に忍ばせしもの
あれこそ参謀本部の者らの無駄な駆け引き綱引きで
さんざん待たせて待って
やっと出た出た
ここに出た
待機命令解除の知らせに他ならぬ
時は来たれり
望み望んで夢にも見た作戦決行命令
いよいよ大軍司令官閣下より発せられん
勇ましき兵卒の者どもよ
これより先は無駄口つつしまれよ
昨夜の事件の奇々怪々
何の前触れなしに中隊長殿の
ご乱心めされたあの姿
その浅ましきを知れば尚更に
さらには貴様らの胸に強く刻まねばならぬことあり
十日前の昼下がり
意気揚々と出撃されし「ご近所奥さま懲罰隊」のご一同
あられもなき姿を衆目に曝し打ち揃って所構わず昇天されしを
それもこれも本を正してみれば
奥さま方のよろめき心の蒔いた種
身から出た錆
藪蛇
藪の蛇
藪の中なる花と蛇ゆえ自縄自縛の遊びで自業自得と片付けて
皆さま方への御口上
ここをもって結びとせん
されど話はこの先こそ本編
「ご近所奥さま懲罰隊」八面六臂の大活躍
その本編の物語
大入道騒乱より七年遡る
世はまさに平穏無事の天下泰平
そんな平和な世にこそ忍び寄り
知らぬが仏の
試練と未練と可憐の連続波状攻撃
先ほどまでの戯言山盛りは
序言か枕か前説か
本編話に捧げる巻頭詩
この場ここの場限りの思いつき
無駄話
与太話のプロローグ
ならば本編
さぞかし面白きかと問われれば
負けず劣らず行きつ戻りつつまらぬ茶番芝居の繰り返し
まるで政治の表舞台に裏舞台
根回し遠回し
大事なことは後回しの結論迂回
回しまわるよ
くるくる回る猿回し
繰り返されるは猿芝居
あきれ返ってあきらめて
怒りこみ上げ挙句の果てに
喘ぎ仰ぐはの天のみか
いざいざ本編
乞うご期待は決まり文句であるけれど
落胆すること請け合いで
失望まちがいなしの安請け合いで締めとする