連載小説 魂の織りなす旅路#8/洞窟⑵
【洞窟⑵】
洞窟は、どんなに歩いてもちっとも暗くならなかった。どこかに蝋燭や松明があるに違いないと、あたりを見回しながら歩いてきたが、その反面、この明るさが蝋燭や松明のそれとは異なることにも、僕は気がついていた。
「ここは境目さぁね。暗いも明るいもないやね。」
僕の疑問を察した男が、穏やかな口調で言う。ここが、見えるものと見えないものの境目。境目からやって来た僕を知っている男が、境目に僕を連れてきた。何故だ。僕は、この男とどんな関係がある? 僕とこの境目に、どんな繋がりがあるんだ?
「そうさねぇ。あんたをここに連れてくるのが、俺の役割やったさね。もうすぐお役ごめんやねぇ。」
「役割だって?」
「そうさね。だからあんたを見つけてぇ、あんたをここに連れてきたんさね。」
境目の誰かに頼まれて、あそこまで僕を探しにきたということだろうか。僕が問いを口にする前に、男は答える。
「探してなんかいないさね。あの辺をちょいと見回してぇ、すぐに見つけたやね。あすこにいるのはわかっていたさね。」
「誰に・・・」
「誰に頼まれたわけでもないやね。誰かがここで、あんたを待っているわけでもないさね。あんたが俺を必要としていただけやね。」