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連載小説 魂の織りなす旅路#9/洞窟⑶

光たちからのメッセージ小説。魂とは?時間とは?自分とは?人生におけるタイミングや波、脳と魂の差異。月曜日と金曜日に更新。

【洞窟⑶】

 僕がこの男を呼んだとでもいうのだろうか? いつ? どうやって? 僕は一体誰なんだろう。なんだって、あんなところで寝ていたんだろう。

 「そりゃぁあんた、教えたとおりさね。生まれたてのほやほやだったんさね。」

 「始まりの者から?」

 「そうそう。」

 結局は、創造主様のお話に戻るのか。この男の言うことは、なにもかも僕にはさっぱりだ。

 「あんな辺鄙なところに生み落とすなんてな。」

 僕が吐き捨てるように言うと、男はひゃひゃひゃっと肩を震わせながら笑った。
 僕には、この男の言うことが信じられない。しかし、この男は僕の心を読む。洞窟内は外のように明るい。あんなに震えていた僕の体は、火にあたったわけでもないのに芯からぬくもっている。奇妙で不可解なことが起きているのは確かだ。
 僕は、目の前を歩く少女の後ろ姿を見た。体の震えが止まったのは、この少女に出会ったときだった。あのときは、風が山壁に遮られて寒さが軽減したのだろうと思ったが、体の芯からくるこの温もりは軽減どころの話じゃない。
 男に心を読む能力があるように、この少女にも何らかの能力があるのだろうか?

 《温かくなったのは体ですか?》

 不意に、言葉のイメージが脳裏に降ってきた。僕は後ろを振り向いた。誰もいない。少女と男は、変わらず僕の前を黙々と歩いている。声ではなかった。しかし、僕の思考でもない。気のせいだろうか。
 ああ、ほら、また。今度は言葉のイメージとは違う。誰かがくすくすと笑っている。笑い声が聞こえるわけではないし、笑っている顔が脳裏に浮かぶわけでもない。けれど、誰かがくすくすと、楽しげに笑っているのがわかる。

 《目を閉じて》

 誰かが僕の思考に呼びかける。

 《目を閉じて》

 ふいに少女と男が立ち止まり、後ろを振り向いた。2人の微笑んだ顔が僕に向けられる。2人はゆっくりと頷く。僕は静かに目を閉じた。

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