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ペルソナ3リロードは美しい【P3Rクリアレビュー】

「P3のフルリメイクを!」

僕がP3を好きになって早15年。これまで何回も聞いた言葉だ。

実のところ僕はこの言葉にあまり共感できなかった。このままでも充分だと思っていたのだ。

原作が与えてくれた大きな感動が目減りするのを恐れたからだ。

それほどまでにP3は僕にとって大切で、大事な作品だった。

なんだかんだ発売されたP3R。発売日には買っていたけど、忙しすぎてクリアまでに一ヶ月ほどかかってしまった。

結論:
完全無欠だが漂白されたリメイク

なるほどなー。
なるほどなーと唸ることしかできん。GJだ、アトラス(CV:緑川光)

リマスターのレビューはこちらから!

※P3,P3F,P3Pを原作と呼んでいます。
※評価点の項目からネタバレを含みます。

プレイフィール

遊びやすく、綺麗なリメイク

触ってみて思ったのは、圧倒的に遊びやすくなっていること。

それはUIをはじめとするシステム面でもそうなんだけど、綺麗になったグラフィックの数々が作品の訴求力を高めてくれる。

お前、どこまでオシャレになるんだよ

断言するけど、プレイ中に新鮮味はなかった。「新しいゲーム」というよりも、「何周も遊んだペルソナ3」をプレイする感覚で遊んでいた。

今回のリロードを含めると、ペルソナ3を5周くらいしている。そりゃ飽きる。わかりきっているもん。

だけど、システムとグラフィックだけで、十分すぎるほどゲームに熱中できたし、満足できていた。プレイ数分で「あ、当たりだわ」と思ってしまえるくらい。

はぁ・・・(恍惚)

いつからか、アトラスのゲームを評価するときに「他人に勧めやすいか」ということを考えずにはいられなくなった。

その点で言うと100点満点だ。文句のつけどころがない。
何か別作品を遊んで、ペルソナやアトラスに興味を持った人に胸を張って勧められる出来だ。

どれだけ満足したかというと、「逆にP4を勧めにくくなった」と言えば伝わるだろうか。

それくらいP3は、あのP3が現代ナイズされて、新要素もひっくるめてリロードされたのだ。

びっくりするくらい細かく手直しされて、修正されて、作り込まれている。

でもそれは同時に、「ペルソナ3」発売当時の産みの苦しみもひしひしと伝わってきた。

新規軸の悩み

「ペルソナ3」は革命だったと思う。

メガテンの系譜を継ぐ、いわゆる女神異聞録の方向性からゴリっと舵を切った作品だった。
それがアトラスという会社の転換点で、この英断が大成功だったことは誰がみても明らかだったと思う。

でも、リロードを遊ぶほど、原作スタッフがおそらく悩み抜いた部分が浮き上がってきた。

原作はクールだが、その奥に不気味さや熱さがあった。
リロードはクールで、透明感があって、綺麗に終わっている。

この解釈次第でリロードへの評価が分かれると思う。

原作について、新機軸を打ち出すにあたり、過去作との関連性は必ず考えたはずだ。
どこまで行ってもペルソナ3はペルソナ2の続編だし、当時はペルソナシリーズの最新作だったはずだ。

だからこそ、あのギスギスした感じや薄暗く、救いようのない感じを踏襲するほかなかったのだと思う。

でも、僕たちファンがアトラスへ持つ印象は、ペルソナ4を皮切りにガラッと変わってしまった。

そういったユーザーの声を受けて出来上がったのがリロードなんだと思う。
ペルソナ3は試金石になったのだ。

身も蓋も無い話だけど、僕はやっぱりオリジナルの方が好きだ。

リロードはそれくらい別物で、でも素晴らしい作品だと思った。
リロードが「当時の開発チームが再現したかった作品そのものであるか」と聞かれれば難しいけれど、それに近しい作品なんだろうなぁとも思った。

トータルクオリティはペルソナ5レベル。そりゃあアトラス史上最速100万本行くわ。

それではクリア後にお会いしましょう。
ここからネタバレ全開です。ご注意。

評価点

好きになったキャラクター

リロードでは、SEESのメンバーを好きになれる。

もう一回言う。

リロードでは、SEESのメンバーを好きになれる。

これは革新なんだ。どうしても伝わってほしい。本当に伝わってほしい。
特に原作を遊んでいない人に大きな声で喧伝したい。ここが1番頑張ったポイントなんだ。すごいんだ、これが。

個人的に可愛すぎて参ったのはゆかりっち。どうしたんだよ! ゆかビッチじゃないのかよ!!

こういう描写の破壊力が抜群。
原作だとぶっ叩かれてたイベント。でも、描写がバッチリで、言動のチグハグさと不安定感が伝わってきて、ゆかりのキャラが魅力的に見えてくる。

作中で最も嫌われていたであろう順平も、リロードになって表現がマイルドになった。

例のセリフも・・・
大きな不快感なく着地

マイルド、と言うと語弊があるかな。
でも、セリフや行間を埋めるエピソードが挿入されたことで、プレイヤーの嫌悪感はぐぐぐっと下がった気がしている。

おそらくだけど、リロードから遊んだ人は、順平が気にならないのでは?
そりゃあ陽介や竜司と比較すると・・・って言うのはあるけど、それぐらい人間味あふれる可愛らしいキャラクターになっていた。驚きだ。

こう考えてみると、原作に足りなかったのは「隙間」だったんだなぁと思っている。

新要素を盛り込みすぎた結果、小さな部分にまで手が回らず、尖り切った仕上がりになってしまったと思った。

簡単に言うと説明不足だ。口数が少なくて誤解されている、みたいな感じ。
ただ、原作の刺々しいあの感じを開発陣が是とするのか非とするのかはわからない。作り直した結果マイルドになったのなら、「非」の可能性は高いけれども。

後述するけど、ここをどう捉えるかがリロードへの評価の分水嶺になると思う。

この仲間キャラへの愛着に一役買っているのが、リンクエピソードと寮での共同作業だ。

そういえば高校生だったね、あんた。
え、ええっ、エプロン!????!?!?!?!!!!!?!?!?!?!
さながら新婚さんだね。ふふっ。

一つだけ不満を言うのであれば、リンクエピは日数経過しなくても良かったかなぁと。

やっぱり日常はコミュを進めたい。だから、その煩悩と戦いたくなかったなぁ。エリザベスの依頼は時間経過ゼロなので、あの枠でも良かったと思っている。

魅力的になったのはSEESだけではない。コミュメンバーだってそうだ。

Y子のデザインはなんなんだろうか。
4Fのノゾミっぽいけど、違うし、特定できなかった。
本当にニヤニヤしててすみません。
お前が可愛いだと・・・?
君ならなれるさ。立派な教師に。
クソおもんない真実。一番ガッカリした。

副島成記は天才だと思う。彼なくして今のアトラスはない。

でもおっきな声で言う。原作のグラフィックは怖い!!不気味!!
それらが刷新されたことで、キャラへの愛着がググッとました。

こういった部分を見ると、きっと出るであろうP4のリメイクにも期待が高まる。文化部のブスは救われるのだろうか。

強化された演出面

リンクエピや寮での共同作業もそうだけれど、全体的に演出面が強化されている。

これが贅沢な物語体験に一役買っていたと思う。
特にP5チックな3Dムービーは今後もぜひ使ってもらいたい。
見やすいし、没入感が高まるムービーだと思う。

画力強すぎる
この辺り最高でした。
原作のアニメ見てみ?ガビガビだぜ?
リロード随一の名シーン

正直な話、原作の発売当初からアニメはいらないと思っている派。
当時は革新的だったのかもしれないけれど、クオリティはそんなに高くない。
それはリロードでも思った。もちろん悪くはない。悪くはないんだけど、コスパが悪いような気がしている。

ペルソナからアニメを削っても問題ない。
そう思えるくらい、3Dムービーのクオリティに満足していた。

個人的にものすごく嬉しかったのは、ストレガの深掘り。
原作を遊んだ人に共通する感想として、「結局ストレガってなんなん?」があったと思う。

プレイヤーにとってボスは「満月のたびに現れるシャドウ」だった。それか「全コミュMAXの欲望」
ポッと出のストレガに「なんなんだよ」と言う印象を持つ人は少なくなかったと思う。

でもリロードでは彼らにしっかりと焦点を当てたことで、ライバルとしての存在感が際立っていた。

熱すぎるわ、こんなん

物語を補完する措置として優秀だったと思う。これは素直にリロードを褒めたい部分。

面白くなったバトル

ずっとこのUIにしてくれ。頼む。本当に頼む。

アトラスはやっぱりバトルなんよ。本当にバトルプランナーにはキスしてあげたい。
テウルギアの有用性はみんなが喋ってると思うので割愛。本当にいいシステムだ。

ここ、いいんですよね。ふふっ。何がとは言いませんが。

個人的にはシフトの存在が大きかったと思う。
これは完全にP5のバトンタッチなんだけど、そのまま持ってきてくれて嬉しかった部分。

「自ターンでの最高効率を考える」っていうアトラスRPGの面白さを最大限発揮させてくれる名采配。

遊んでみて思ったけど、やっぱりプレイヤーが有利な方が面白い。
敵のパラメータはいくらでもいじれるんだから、これくらいのアドバンテージはあってもいいと思う。

あとは、エイハコウハの採用。

正直、即死魔法の使い道なんてたかが知れている。
マハムドオン<<<<<<<<<<<死んでくれる? ぐらいの有用性。
いっそのこと敵専用のスキルにしてくれてもいいくらいだ。

だからこそ、破魔呪殺系のペルソナは使いにくい印象が多かった。
原作のタナトスがいまいちパッとしないのもそれが理由だ。

ただ、属性攻撃と即死の魔法を分けてくれたおかげで、日の目を浴びたキャラがたくさんいる。
そのおかげでリロードの天田やコロマルが使いやすい。結局使わなかったけど。

一見してどうでもいいと思えるところだけど、こう言うところにメスを入れてくれるのはシリーズファンとして本当に嬉しい。え、破魔呪殺のパラメータごと削った作品があるんですか??

不満点

漂白されてしまったキャラクター

評価点と表裏一体な部分。
不満点としてあげるのは古参丸出しで気持ち悪いけれど、でも言わなきゃいけないと思った。

リロードは誰に向けて作られた作品なのか。
それはきっと、往年のファンに向けてではないのだろう。

アトラス作品に触れたけど、P3までは食指が伸びなかった潜在層にリーチするためだったと思う。

歴代主人公の中じゃキタローが1番クールだ。ビジュが強すぎる。訴求力がある。「いつか遊んでみたいなぁ」と思っている人が多かったんだと思う。

今回、リロード開発陣が出した結論は、そういう人たちを叩きのめすことではなかったのだ。迎え入れることだったのだ。

僕はリロードを綺麗な作品だと思う。
でも綺麗すぎて物足りない。彼らの剥き出しの感情をもっと味わいたかった。

このシーンも、原作のボイスの方が好きだったなぁ。

もちろん、思い出補正があることはわかっている。
でも、テキストを差し替えたり、ちょっとした演出を加えたりすることで、そのエグさがマイルドになった印象は拭いきれなかった。

「あまりベタベタと触らないでくれるか?」からの落差。ちゃんとした注意になっちまった。

別に僕みたいなファンの意見は切り捨てるべきだ。
この一点だけでリロードを攻撃する気にはなれないし、僕のわがままだってことぐらいわかっている。

でも、僕がレビューを書くとしたら、この部分はどうしても外せなかった。
リロードを遊んで面白かったら、原作も覗きにきてほしい。
この宣伝だけで溜飲を下げておく。

おとなしめなアレンジ

誤解のなきようにいっておくと、リロードアレンジはどれも素晴らしい。
特におとなしめの曲のアレンジが素晴らしい。
お気に入りなのは「Changing Seasons」と君の記憶アレンジ(インストゥルメンタルで優しい曲調)。

特に「Changing Seasons」には度肝抜かれた。ボーカル部分が入るとあんなに化けるとは思ってもみなかった。最高でした。

後日談のHeartful Cryにも期待してます。お願いします。

君の記憶アレンジは神木のコミュで流れてるやつ。原作はずっと「Living with Determination」だったから、そのままにして欲しかった。10でしか流れないの勿体無い。

その反面、バトル曲全般のアレンジにがっかりした。
P3の顔である「Mass Destruction」とか「Burn My Dread -Last Battle-」が物足りない。

弱い。綺麗で、穏やか。
でも、ここの解釈が今回リロードを味わい深いと思ったところでもある。

前述したように、
原作はクールだが、その奥に不気味さや熱さがあった。
リロードはクールで、透明感があって、綺麗に終わっている。

リロードはクールや透明感で統一したような感じがした。
そこには原作にあったような激しさや熱は不要で、悩んだ結果のアレンジだったと思いたい。

もちろん、新規で書き下ろされた先制攻撃曲の「It’s Going Down Now」は最高だ。本当にイイ。マジでいい。最高すぎる。

だからこそ、アレンジの仕事に手を抜いたと思いたくないのだ。
解釈違いだと思う。そう思いたい。ここは二者択一だろうなぁ。

BGM関連でもう一つ。それはDLCとBGM変更についてだ。
いつからかアトラスは、DLCの扱い方を決め切ったと思う。

ざっくり言うと、本筋に関わらない部分はDLCにぶち込み始めた。
おそらく、4や5の楽曲がDLCに入っていたのはそういう理由ではないか。

衣装と別枠になったのはいい采配。
選びやすくていいよね。

その売り方についてはともかく、4と5しか選ばれなかったのは個人的にガックリときた部分ではある。
原作ではP1とP2の楽曲も採用されていたし、P5では1から4までてんこ盛りであった。
せっかく新規層を取り込めたのだから、別タイトルの宣伝もしておけばいいのにと素直に思いました。ただ僕が「神話覚醒」を聞きたかっただけです。すみません。

あと、これはリメイクの宿命なのかもしれないけれど、
もっと「Burn My Dread」を聴きたかった。流して欲しかった。
劇中じゃ一度、しかも一瞬しか流れないはず。ラストバトルにアレンジはあるけど。

既存システムの天井

これは僕だけだと思うから、小さくつぶやいておく。

そろそろカレンダーシステムに飽きてきた。
これまでのプレイを振り返ってみると、
3は5周、4は1周、5は3周してきた。
どれもおもろかったけど、いい加減に飽きてきた。お前がやりすぎなだけ説。

確かに革新的で面白いシステムだったけれど、6がどうなるのかっていうところは考えなきゃいけないと思う。

変えろ!っていってるんじゃない。
6でカレンダーが廃止されたとしても、一辺倒に文句を言うのは違うと思う。

あと、タルタロスはやっぱり面白くない。
原作に比べたら格段に面白くなってるんだけど、流石にキツかった。

神機能ではあるけど、13レベルの上限は必要だったのか?

仲間のレベル差を埋めるための時計とか、モナドの扉の出現頻度はもう少し調整があっても良かったかも。
これらは特に僕が時間にゆとりがなかったというところもあったと思うけど、一応。

総評

リメイクとはなんなのか

十数年の時を経て生まれ変わったペルソナ3。
僕の評価は変わらない。完全無欠のリメイクだ。
僕みたいな厄介な古参ファンを無視すれば、誰の目から見ても完璧な作品だったと思う。

このシーンで鳥肌が立ったんだ。
アイギス嫌いなのに。

というか、アトラスがここまでリメイクに力を入れるとは思ってもいなかった。正直、期待値ゼロ、お布施の気持ちでプレイし始めたというの大きかったんだと思う。

ゴリゴリの表現力でパンチがました名シーン。ボロ泣きでした。

リロードを遊んでみて、一つ強く思ったことがあった。

リメイクは、二次創作だということだ。

どれだけ似せようと、真似をしようと、作り直すとなったらそれはもう原作ではない。当時の開発スタッフを全員揃えても、同じものはできないと思う。そう考えると二次創作だ。

こうやって差し込まれる日常を、僕らファンを欲していたのだ。

本記事でP3PまでのP3を「原作」と呼称しているのにもそういった思いがある。
リロードでは、キャラの解釈について開発陣とプレイヤーが一致していた。
僕たちがコントローラーを握っている間、「きっとこうなんだろうな」「こうであってほしいな」と思う部分を、開発陣も思ってくれていて、最高の形で表現してくれていた。

リロードでは光ってたぜ、お前
こういうゆかりの可愛らしさが良いんだ。
本当にヒロインなんだ。

だから嬉しかったんだ。完璧なリメイクだったんだ。
新規への窓口として、リロードは十二分に機能するだろう。

そんな作品がこの世に生まれたことを素直に祝福したいと思う。
僕らの思い出を綺麗に再現してくれて、本当にありがとう。

開発スタッフに最大限の感謝を。
ありがとう。本当にありがとう。

でも、たった一つだけ。
本当に一つだけ、残念な点があった。

残念というか、ガッカリというか、恥ずかしくなったというか。
綺麗なグラっていいことばかりじゃないんだなぁっていうか。

・・・・・・途端に生々しくなるのね。


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