メタファー:リファンタジオは転換点だ【クリアレビュー】
ペルソナ3リロードに始まり、真VVを経て、2024アトラスの殿を務めるメタファー。
もちろん、発売日に購入しておりました。
たっぷりと遊んで、つい先日ようやくクリア。
面白かった。おもろかった。うーん、良いゲームだ。
アトラスの集大成。果たして、ここからどこまでいくのか。
※評価点の項目からネタバレがあります。
※全編通して橋野氏の敬称略です。愛してるぜ、橋野。
プレイフィール
世界を巡る物語
「メタファーってどんなゲーム?」
この質問の答えは、
ゲーム→ペルソナ5
バトル→アバチュ
舞台→ファンタジー
たったこれだけで説明ができる。
というか、これでピンときたら買っていい。後悔はしない。
中でも、「ペルソナ5のようなゲーム」というところがミソだ。言い換えると、橋野要素がふんだんに取り入れられている。既存ユーザーは安心して遊べるし、新規ユーザーは新鮮に驚けるだろう。
メタファーは旅だ。王位継承争いを本筋に、世界を駆け巡る壮大な旅なんだ。
都内とパレスに閉じこもっていたP5とは打って変わって、メタファーでは文字通り世界中を歩き回る。
この旅に出る感覚が、これまでのアトラスのゲームと一線を画すところだ。
物語序盤から張り巡らされる謎、宿敵ルイの思惑、王位継承の行末。
確かに興味を惹くストーリーだ。実際面白かった。
でも、僕がメタファーを強く評価するのは、この旅をしている感覚だ。
世界各地にいろんなロケーションが散りばめられていて、大人気なくワクワクしてしまった。
度肝を抜かれたのはマップの作り込みだ。
都1つ1つが作り込まれている。グラン・トラドだけでも3マップくらいある。いや、作り込みすぎだって。
ただ、これだけでは終わらない。
オープンワールドゲームが珍しくなくなった昨今、作り込まれたマップは通過点のように思える。(アトラスがそんなゲームを出してきたことに僕が驚いているだけだ)
大事なのは操作している実感で、「見渡せる場所全部に行けること」がユーザーによって何よりの刺激だった。旅路の工程を自由に組み込むことができるからだ。
メタファーの「旅感」はそれらとは異なるアプローチだった。
揺れと重低音が響く車内。思い思いに過ごす仲間たち。
これだ。これなんだ。
これがまんま「新幹線で遠出をする感覚」なのだ。
車内で何しようかな。本を読もうかな。動画でも見るか。
持ち帰った仕事しようかな。あ、おしゃべりするのもいいよな。
僕は旅行において移動が一番楽しい。「メタファー」というゴリゴリのファンタジー異世界において、まさかこの感覚を味わうとは思ってもみなかった。
カレンダーシステムにおける「昼間パート」を鎧戦車でも過ごせるようにしたのは英断だった。この旅行体験はメタファーがもたらす唯一のものかもしれない。
贅肉だらけの豪華演出
メタファーは言ってしまえば、アトラス作品の詰め合わせだ。
プレイ体験はP5だし、バトル体験はアバチュだ。
ただ、それ以上に作品全体が醸し出す雰囲気がたまらない。これにやられてしまう。
それらに一役買っているのは、贅肉だらけの豪華演出だ。
UIが最高であることはこの際省略する。
驚いたのは、そのほかのちょっとした面でも作り込みがすごいところ。
ゲーマーが共通認識している当たり前にメスを入れて、そこでも楽しませようとしてくれる。お前はどこまでやるんだ、橋野。
特に意識していなかったとしても「ここもかよ!?」と新鮮に驚ける。これが楽しいのだ。
言ってしまえば、ゲームの面白さには直結しない部分ではある。でも、こういう無駄がすごく楽しくて、嫌味がない。
メタファーをプレイし始めて数時間、僕はとあるタイトルを思い出していた。
「キャサリン」だ。
キャサリンはアドベンチャー&パズルゲームだ。数多くあるアトラス作品の中でも異質な一作。
発売当初、PS3で初めて遊んだ時、非常に面白かった印象がある。楽しかったのはやはり「無駄な部分」だった。
このバーの中では、いろんな人と会話したり、携帯をいじったり、店内のミニゲームで遊ぶことができる。ゲーム中では唯一自由に動き回れる部分なんだけど、本筋とはあまり関係がない。ここも無駄な部分だ。
でも、メールの返信に気を使ったり、お酒の豆知識を勉強したり、そういう生活体験が楽しかったのだ。
数年後、ペルソナ5が発売された当初、僕は最初に「キャサリンじゃん!」と思った。
橋野ゲーは「キャサリン」を経て、「ペルソナ5」で完成した。僕はキャサリンを勝手に転換点だと思っている。そして面白さはずっと変わらない。
メタファーはキャサリンのようなプレイ体験が連続する。
いや、ジャンルがそもそも違うし、共感は得られないかもしれない。
でも橋野ゲーイズムはメタファーにもしっかり広がっていて、それが僕に届いた気がした。この良さを言語化するのが非常に難しい。
一見して、どうでもいいことではある。でも、僕が初めてキャサリンを遊んだ時の興奮が新規プレイヤーにはあったのなら、それは非常に羨ましいことだ。
僕にとっては既視感と安定感の塊。他の人はどう思ったのだろうか。
ここまでダラダラと書いてきましたが、一言で言うなら「買え」です。
非常に面白くて、満足感の高い作品です。
アトラス作品を遊んだことのない人にほど手に取ってもらいたい。
以下、ネタバレありです。
クリア後にまたお会いしましょう。
評価点
コミュシステムの親和性
メタファーを遊んでいく中で、改めてP3以降の作品の面白さを再確認した。
というよりも、面白さが因数分解できたと言った方が正しいか。
よく「P3以降はギャルゲーだ」と言われる。悪口の常套句だ。
でも、NPCと交流を深めるというのは、僕が思っていた以上に面白い要素だったのだ。
僕は今まで、「ペルソナは学園モノで共通点が多いから仲間感が強いんだ」と思っていた。
確かにその要素はあると思う。でも、それだけじゃなかったんだ。
今回遊んでいて発見したのは、「コミュシステムは世界観に奥行きを持たせるシステムだ」ということだ。そしてそれはJRPGとの親和性が非常に高く、没入感を高める措置として優秀なのだ。
メガテンの仲魔への愛着は、いかに窮地を助けてくれたかで変わる。それはいわゆる普通のRPGでよくあることだろう。
メインシナリオに載せるには脱線しすぎてしまう。でも、伝えたいキャラの魅力がある。それをサブストーリーで補完する。
やはりこのシステムは画期的だったんだと思う。
もちろん、メインがつまんないわけじゃない。
テキストセンスが光りすぎる。今回の仲間キャラはマジでみんな大好き。パーティ編成死ぬほど悩んだ。
メインストーリーの詳細は後述するとして、やはりコミュシステムは面白かった。
今回のサブキャラでお気に入りは「アロンゾ」と「ベルギッタ」。
1つ1つのサブシナリオ(コミュ)に関連性はないんだけど、でもそれぞれが補い合ってメタファーの世界観を説明してくれている。
この世界にのめり込む措置として、やはり優秀な仕掛けだなぁと思った。
特定のNPCに専用の立ち絵やイベントを割り振ることは珍しくない。言ってしまえば、それだけでもキャラ立ちとしては十分だ。
でも、そこに切り込むことによって、プレイヤーが感じ取れる世界観に奥行きが広がっていく。この感触が楽しい。だから、最後の日に、ゆっくりとグラン・トラドを巡りたくなる。
プレイしている最中は、夢中で進めたくなる。
効率的にイベントを消化したいっていうゲーマー的な発想もそうなんだけど、のめり込みたくなる。
この発見はメタファーじゃないと気づかなかった。
サブシナリオ、イベント、クエストって、どうしても無視されがち。
それこそ、やり込みたい人でもなければ、スルーすると思う。僕も他の作品を遊ぶときは軽んじるタイプだ。
でも、コミュを進めた先のご褒美を目当てにやってしまう。
やった結果面白くて、クリア後は満足感に包まれるのだ。
乱暴な言い方をすると、これも「悪魔会話の発展系」なのである。
NPCとの会話イベントで愛着を持たせる。やっていることはメガテンから何も変わっていない。なるほどなぁと思った。
プレスターン最高峰
プレスターン最高傑作はアバチュ2です。
メタファーは、そのまんまアバチュ2です。最高です。
つい最近までアバチュ2を遊んでいた僕は狂喜乱舞。ここは非常に小躍り。
ジンテーゼはリンケージ。突撃の狼煙はそのまんま。その上、アボイドリング。もうまんまじゃん。実質アバチュじゃん。この辺りはニタニタ全開でした。やめてくれ、僕が喜ぶだけだ。
話を戻して。
1 moreでもなく、サバトでもなく、プレスターンを持ってきたことに素直に驚いた。しかも、連携技まで引っ提げて。結構びっくりしてる。
プレスターンそのものの面白さは割愛するとして、注目したいのは脇を固める2つのシステムだ。
1つ目はキャラビルド。
今回はアーキタイプ(P2のペルソナみたいな感じ。ドチャクソかっこいい。お気に入りはシーフ。本当にさァ、琴線に触れるからさァ。)を育てることでスキルを習得し、自由枠に付け替えるという感じ。これも言ってしまえばアバチュのマントラだ。
ただし、自由枠が最大で4つまでという縛りがある。加えて、連携技のジンテーゼは、発動条件がアーキタイプだ。所持スキルじゃない。
上の例で言うと、「突撃の狼煙は、仲間に『探究者』か『騎士』か『軍師』がいるときに『軍師』が使えるスキル」であることだ。
ジンテーゼだけで編成をしても、自由枠につけるスキルが弱かったら、戦力的には厳しい。各々の最強アーキタイプで挑んでも、ジンテーゼが噛み合わないと火力が出ない。ここがね、めちゃくちゃ面白かった。
自由枠につけるスキルを考えるのがすごく楽しい。
ストロールは戦士ビルドにしよ→でも、ンダ覚えさせるともっと強くね?→じゃあ道中は道化師にするか→ンダが使える戦士ができた!
このロードマップを無限に考えてしまう。楽しい。めちゃんこ楽しい。
これも全てプレスターンが面白いからだ。1アイコンで何をさせるのか考えていると時間が溶ける。
2つ目は、ファストバトルの存在だ。
プレスターンの欠点は、いちいちめんどくさいことにある。戦略を間違うと、格下に負けることもしばしば。だから、道中の戦闘には気を遣う。
でも、戦闘を避けていたら、キャラはいつまで経っても強くならない。
ファストバトルは、このプレスターンの欠点を克服した解決策とも言える。
ファストバトルでかったるい戦闘&稼ぎを省略して、強敵には全力で挑む。
この辺りのバトル体験はメリハリが効いていてとても良かった。
今後のRPGに標準実装してもらいたいレベル。
少しアクションがバタくさいけど、それはご愛嬌。
前述したキャラビルドの面白さが乗っかって、レベリングが非常に楽しみでした。
余談ですが、今作は「弱点付与」がかなり強いです。マスクドダンサーを信じろ。
連続する面白さ
なんと言っても、メインストーリー。おもろい。
色々と言いたいことはあるんだけど、それでもおもろい。うん、おもろい。
本作は非常に画角がいい。絵コンテがバッチリ決まっていて、画力がある。
1つ1つが良質なアニメみたいで、すごく引き込まれました。イベントシーンがね、たまらんのよ。
メインストーリーはわかりやすい。
王位継承と王子の呪い。あとは宿敵ルイとの対峙。
このねぇ、ルイがねぇ、いいんすよ。
ヴィジュアルと名前に違わず、しっかり混沌。これにはメガテン勢もニッコリ。ちゃんと正統派なヴィランで、思わず立ち向かいたくなる。強さは控えめだったけど。
どれだけ脇道に逸れても、わかりやすいメインストーリーのおかげで戻ってこれました。現実世界の話をすると、プレイ間隔が1週間空くとかザラにありましたが、メインを忘れることなく再開できました。
特に中盤の盛り上がりが異常。
ベストイベントはマルティラだけど、ビルガに着いてからバジリオ加入までの流れが面白すぎた。月下の対決は痺れる。あそこさ、あそこさぁ!!!!
ちなみに。今回一番興奮したポイントは、
この辺りは本当に最高でした。気づいた時に鳥肌たった。太陽-Nirvana-を思い出すぜ、橋野。
不満点
ストーリーの着地
ストーリーの山場はバジリオ加入だと思う。
あそこが一番面白くて、あとは最後に向かうのみ。
思ってた以上に、終盤が盛り上がらなかったという印象が残った。
厳密に言えば、作中に紹介した要素を消化しきれていなかった印象を受けた。
こういうと真Vの「創世の女神編」を思い出すけど、あそこまでは露骨ではない。物語全体として見ればしっかり終わっていたし、あまりケチをつける気にはならない。
例えば魔法学院の存在。何かしらのイベントがあったのではないかと邪推する。あそこで1ダンジョンくらいは作れたのでは? と思う。
不満があったのはアカデメイア関連だ。実際に魔法学院に行って、そこで衝撃の事実があって、アカデメイアが解明される〜の流れだと思っていた。
バジリオが最後の仲間に加わり、主人公が王子になった段階で、残りの展開がほとんど予想できてしまう。
と言うよりも、僕は「本当にルイが最後まで悪役なのか?」と疑い続けてプレイしていた。大どんでん返しを期待していたのだ。
終わってみれば無難な着地。そこに異を唱えても仕方ないんだけど、もう一捻りあって欲しかったなというのが率直な感想。
プレスターンの調整
楽しかったバトルだけど、いくつか不満点もある。
まずは戦闘開始前に決着している場合があること。
これはアバチュにも言えたことだし、今更感が強いので、小声で呟いておきます。ペルソナみたいにスキルの付け替えができないので、無理なビルドだと絶対無理なゲームになる。
かなり怒っているのは、悪天候と不安。
まずは悪天候から。
経験値が増えるっていうメリットはあるけど、それでもプレスアイコン的に不利になることの不快感がすごい。何が頭にくるって、敵には適用されないこと。この点が非常に腹立たしい。
ダンジョンはなるべく1日で攻略したいのに、悪天候だと消耗が激しすぎる。途中からは天候を変えられるNPCも出てくるけど、そう言う問題じゃない。メリットとデメリットが釣り合ってない。はっきり言って邪魔でした。
次に不安。これにかなり怒っている。
真4のニヤリから全く学んでいない。そもそもそういう状態異常を作んなっての。
これにアクションの拙さが絡んでくる。
攻撃判定やウェイトのせいで、思ってるようにキビキビと動かない。敵襲→弱点ブッパ→不安→全体攻撃で簡単にゲームオーバー。
何が頭にくるって、敵襲からゲームオーバーまで、プレイヤーが介入できないこと。もっさりアクションはそちらの都合です。
加えて、敵が不安の状態異常にかかることはない。単純にこっちだけのリスク。リターンはどこにあるのか。
この不安っていうのがメタファー全体を通して重要な要素になっているのはわかる。でも、通常プレイにまでそのシステムを落とし込む必要はなかった。
例えば、「ルイ戦だけで使われる特殊状態異常」とかなら、まだ溜飲は下がった。通常戦闘に持ち込んでくるのは論外。本当にやめてください。
プレスでいじっていいのは眼光だけです。それ以上はやめてください。
総評
アトラスの転換点である
僕はメタファーに「真・女神転生if…」の影を見る。
ifはメガテンのシステムそのものの面白さを実証した作品だったと思う。同時に、ペルソナに繋がった重要な一作だ。
つまり、メタファーも既存システムがどれだけ受け入れられるのかの試金石だったということだ。
真3から始まったプレスターンと、P3から始まったカレンダーシステム。
それらが作品特有のものではなく、普遍的に「面白い」と思えるものだったということをメタファーが実証してくれたのだ。
加えて、メタファーの世界観は優秀だとも思う。
それはこれまでのアトラスブランドを内包し得る世界だということだ。
こういうオマージュが問題ない作品だと思っている。
異世界の少年としてジョーカーが出てきてくれてもいいし、真なる支配者として四文字が君臨してもいい。アトラスがこれまで培ってきたキャラ人気を集約しうる作品だと思った。
発売初日に世界売上100万本を達成した。紛れもない快挙だ。メガテンやペルソナといった看板タイトルに並ぶ一作になったと思う。
正直、メタファーのターゲット層は僕みたいな人ではないと思う。まだアトラスを遊んだことがない人に向けられていると思う。仕方ないけど、それは認めるしかない。
それでも、メガテンとペルソナのちょうど中間的な作品が出てくれたことは、素直に喜ばしい。片方をプレイした人がもう片方に行く前に遊んでもらいたい作品だ。
メタファーはここからどう展開していくのだろうか。
きっと次回作は早くても5年後くらいになると思うけど、気長に待ちたいと思う。
ありがとう橋野。ありがとう開発スタッフ。ありがとうアトラス。
面白かった! コンゴトモヨロシク!