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葛葉ライドウに浪漫を感じてくれ【超力兵団クリアレビュー】
十数年前にアバドン王をクリアした。
それが僕にとって、初めてのデビルサマナーだった。
あれからずっと、「ライドウの新作を!」と言い続けている。
待ち続けている間、ふとした疑問が心の中で芽生えてきた。
「本当に良い作品だったのか?」
あれから長い年月が経ち、つい先日ソフトを入手。
重い腰をあげて、僕にとって初見最後のデビルサマナー作品を遊ぶことにした。
結論:
お手本のような外伝作品
やっぱり僕は間違ってなかった。
これは素晴らしい。なんでこんな体力あったんだ、アトラス。
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※評価点からネタバレ全開です。ご注意。
プレイフィール
打ち出された新機軸
当時のアトラスを少し考えてみたい。
2003年に真3が、そして2005年にはアバチュ2を発売しており、そこから約1年後の2006年の3月に本作超力兵団が発売されている。ちなみに7月にはペルソナ3が発売されている。
2005年の12月にお世辞にも上出来とはいえない初代デビルサマナーの移植がPSPで発売されているところを見ると、アトラスがこのIPに力を入れていたのは言うまでもないだろう。
ちなみに、PSPのデビサマにはスペシャルムービーとしてライドウのPVが収録されている。
正統(クラシック)なRPGを二本開発しきったアトラスが打った次の手が、ペルソナ3とライドウだ。おそらく、ここからどんどんとまた開発が進められていく予定だったんだろう。
ペルソナ3は散々語ったので割愛するが、やはりライドウの存在は異質だ。
プレイしていて全般的に感じるのが、「新しい体験」の数々だ。
ゲームシステムが根幹から違うことに始まり、ゲームプレイ全体を通して新鮮さに溢れている。
しかし、ハッカーズという看板があまりにも巨大すぎたのだろう。あるいは、そのあまりにも素晴らしすぎるパッケージに面食らったのだろうか。
ユーザーたちに好意的に受け入れられることはなかった。
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大好きです。
売上本数は確認できている分で9万本。
これだけのものを作って9万本。なんとも肩透かしな結果に終わってしまったと思う。
過去の話はさておいて、作品は現代にまで残っている。
プレイした上で思うけれど、やっぱり良い作品だ。
スタッフがやりたかったこと、詰め込まれた想像力を、なるべく伝えていきたいと思う。
大正浪漫街道驀地
僕にとっての大正浪漫は葛葉ライドウだ。鬼滅じゃない。
10年前からずっとライドウだけだ。
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仲魔を管に閉じ込める感じがさァ!!!
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教科書にも載っているだろう…。
舞台は大正時代。画像にもあるけど大正20年。架空の時間軸だ。
この大正時代を自由に練り歩けるのが最高にたまらない。
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この街並みがいくつもある。たまんないよ。
僕の直感を言語化するのがとても難しい。
でも、この世界の隅々まで好きなんだ。
街並み、事務所の雰囲気、看板の感じ、何もかもが好きだ。
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モガな感じがいいよね。
スマホも携帯すらない時代に、刀を持った書生が帝都を練り歩く。
このフレーズでピンときたら、間違いなくおすすめだ。ぜひ遊んでほしい。後悔はさせない。
デビルサマナーであること
ライドウシリーズこそ、「デビルサマナー」という称号が似合う作品はない。この一点においては、ペルソナはおろか、本家メガテンにも勝ると思う。
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ウコバクに愛着を持つ日が来るとは。
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主人公のライドウは、確かに特殊な訓練を受けた強者なんだけど、あくまでそれは人間基準。
無理を押し通す時、悪魔の力を借りる必要がある。
これがなんともたまらない。
登場する仲魔は総勢70体程度。
驚くのは、それらの仲魔を自由に連れ回せることだ。
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真1や2の話が出てくるところもニヤリポイント。
これだけで十分満たされる。好きな仲魔を連れてロケーションを闊歩できるだけで楽しいのだ。
新しい悪魔を仲魔にするとゲームの攻略が有利になる。これがメガテンシリーズ全般の常識だ。
でもライドウシリーズは、「連れ歩く」という楽しみがある。これが目当てで仲魔を選んでもいい。
戦闘スキルの他に、各悪魔には探索スキルが割り当てられている。
それは悪魔固有のものと、種族によるものだ。
詳しい説明は割愛するけど、従来の妖魔とか大天使とかいう区切りはなく、ライドウシリーズでは別の種族が割り当てられている。
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蛮力族だから固有スキルの「力まかせ」が使える。
絶頂捜査は初見3度見した。
これらの要素だけでも、ライドウシリーズを遊ぶ理由になると思う。
例えばwikiを少し覗いて、お気に入りの悪魔がいるか確認してみてもいい。
一体でもいるなら、あなたにとって息の長い作品になること間違いなしだろう。
以下、詳細に入ります。
評価点
わかりやすく面白いストーリー
行方不明の令嬢を追っていくと、巨悪に巻き込まれる。
簡単にいうと、ストーリーはこんな感じ。
僕が超力を推すのは、物語に悪魔が絡んでくることだ。
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まさに表社会と裏社会の共存って感じ。
これまでのレビューでも述べてきた通り、デビルサマナーは陰に潜むものだ。決してその存在を公にしてはならない。
だからこそ、協力者の存在やその影響がどのように世間に伝わるのかは丁寧に取り扱う必要がある。
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最高な世界観だ。地震きたら一発だろうけど。
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この采配が小気味よい。
こうして丁寧に作られた世界観の上を、王道な物語が走る。
全12章構成だけど、一つ一つの章は短い。いい意味でやめ時があるので、ゲームプレイにメリハリがつく。
個人的に面白かったのは、天津神と国津神がいがみ合っているところだ。
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この辺りが見えてきてから、悪魔の見え方が変わってきた。
国津と天津のいがみ合い、おもろい。
この辺りのやり合いを見て、真っ先に連想するのは真2。(初出は真1らしいけど、忘れちゃいました。)横道に逸れつつも、僕的にはかなり訴求力の高いエピソードでした。
その他にも、メインの裏に流れる「近代化」のテーマが面白かったです。
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ちょうど狭間だよね、和洋の。
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蟹工船みたいに、ゴリゴリのプロレタリアでもよかったのに。
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大正20年を現代換算すると、第一次世界大戦が終わって、そろそろ第二次が始まりそうってところ。
ライドウに限らず、こういう創作物は全部が嘘だ。
でもその嘘の中に、実際に起きたことを混ぜ込むことで、一気に面白くなる。この塩梅がちょうどよかったです。
日本はちょうど殖産興業が浸透し切って、戦争成金とかが生まれていた頃。この当時の機械信仰は現代の比じゃなかったと思う。
こういう時代背景だからこそ、浪漫が輝くんだ。
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僕は結構すんなり受け入れられた。
全編通して面白い話運びでした。
外伝作品ならば、LNCも正直いらない。
王道でとてもよかったです。
考えられた予算按分
流用できるモデリングがあるとはいえ、ライドウで出てくる悪魔は大半が新規だと思う。
冒頭で紹介しているウコバクやツチグモ、ベリアルやヨシツネなどなど、どれも真3やアバチュにはいなかったはずだ。
加えてアクションRPGであるということ。かなり工数の多い作品であったことは間違いない。
ライドウが偉いのは、取捨選択をキッパリとしたところだ。
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必要最低限の工数でマップができる。
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呪われている描写はただの反転。
こういうのでいい。
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こういうのが好きなんすよ、僕。
ゲーム全般を通して、マップはただの一枚絵だ。3Dのように見せているだけで、ただの2Dを動いている。なんとなくサガフロを思い出した。
でも、ライドウに求めているものは作り込まれたマップじゃない。マップはただのロケーションに過ぎない。
それを割り切って、予算を安く仕上げていたのだ。この取捨選択がキラリと光る。
抑えた工数を他に回すことでクオリティが高まったかはともかく、それでも昨今のアトラスに見習ってほしい部分ではある。ハカ2を許すな。
ニヤリとするオマージュ
ライドウシリーズは外伝だ。だからこそ、本編の話が出てくると嬉しくなっちゃう。
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でも、LAWの首魁はミカエル(大天使)では?
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真2はこの辺りなのだろうか。
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外伝として立場を弁える、というと偉そうだけど、でもちょうどいい塩梅でした。
こうして振り返ってみると、やっぱり面白い作品だったなぁと思う。
単純に良し悪しもそうだけど、なんというか「推せる」。
それはきっと、スタッフの熱量のおかげだと思う。
いやあ、よかった。
良い作品でした。ここからアバドン王が生まれたのか。うんうん。
さて、不満点です。この野郎。
不満点
アクションゲームとしての拙さ
戦闘はゴミ。びっくりした。(アクションゲームでもこんなこと言うんだな。)
はっきり言って同人ゲームレベル。
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まずライドウの操作性がもっさりしている。
その上で、各動作の後にウェイトが入っているから、一つの操作ミスで感じる硬直が長い。
基本的には刀をブンブン振り回すだけ。銃を撃つこともできるんだけど、豆鉄砲。そんなに優先度は高くないかな。
仲魔が弱点を突かれると硬直するんだけど、硬直が解ける前にまた魔法をぶつけられて何もできなくなるパターンがある。この辺りははっきり言って調整不足だと思う。
そのくせ、ボス戦になると、耐久値みたいなのが設定されていて、一定以上弱点で攻撃し続けると初めて硬直する、みたいな仕様。
一番苦戦したのは、こいつ。
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仲魔との合体魔法が使えて、それがそこそこに強いんだけど、ウェイトの管理が謎。というか、全般的にウェイトとアクティブの区別がつかない。
だから、「硬直が終わったら動いて…って、もう動けるじゃん!!」が頻発する。あるいはその逆もまた然り。
魅了された僕のオオクニヌシは、ミシャグジさまにディアラマをかけるマシーンとなりました。勘弁してくれ。
あとは、魔法の空振り。
仲魔の魔法は、魔法発動時に標的がいた座標に向かって打ち込む仕様。
このゲームはワープで移動する敵も少なくない。だから、必然的に空振りが多発する。
消費MPが全体的に軽めなのが幸いか。それでも後半戦はチャクラポットをばら撒いて戦いました。
戦闘関連でいうともう一つ。仲魔の勧誘。
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弱点属性を突いた時の硬直時に◯ボタンを押すと、管に悪魔を封じ込めるというシステム。
悪魔会話を変えようとした試みはいいけれど、個人的には非。
ボタン連打系のシステムが好きじゃない。
これが億劫で、後半は勧誘の一切をしませんでした。うーん。
全般的な調整不足
まずはエンカウント率。高すぎ。
ライドウのレベルに応じて変わっているような気がする。
後述する忠誠度稼ぎで筑土町を往復してたんだけど、後半になるにつれて遭遇率が下がった気がした。
あと、街の中でもエンカするのはやりすぎ。次回作で修正されたけど。
その反面、ラスダンのアカラナ回廊は高過ぎてストレスがマッハ。
後半はレベリングもしなかった(しにくかった)ので、歴代アトラス作品の中でも、結構なレベルで嫌いなダンジョンになりました。わかりにくいし。
あとは忠誠度システム。
忠誠度がMAXじゃないと合体ができないシステム。これはいらなかったかな。
デビサマの伝統だろうけど、これは切ってもいい。
一つの悪魔を長く使ってねってことなんだろうけど、シンプルに面倒臭い。
酒を使えば簡単に上がるんだろうけど、そういう問題でもない。
最後にお金。
ゲームプレイ全般を通して、常に金欠でした。
回復スポットのナキサワメはぼったくりだし、これがレベリングの抵抗感を引き上げる。
業魔殿の方が格安だけど、そっちは回復する機会が限られているし、なんとも使いにくい。
全体的な調整不足はご愛嬌。この辺りは久しぶりにやるアバドン王で確認しよう。
総評
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タイミングミスって、ラミア剣で最後まで行きました(激怒)
散々書いたけど、でもやはりライドウが好きだ。
何よりもライドウがかっこいい。本当にかっこいい。
ビジュだけで見れば、人修羅の次に好き。次点でキタローかな。
そんなライドウをこねくり回せる。気分は探偵ごっこ。
作中全般でかかるライドウのテーマがこれまた良い。
ダサい。ダサくてかっこいい。これがいいんだ。
やり直してみて思ったけど、やはりリマスターは難しいと思う。
今から遊ぶにはあまりにも不出来だ。売れ行きも見込めないだろう。
それでも僕はライドウの新作を待ち続ける。
理由は一つ。過去の遺産にするのは惜しいIPだからだ。
気になった人は手に取ってほしい。
君もライドウになろう!!
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