読書の時間 生きる時間

Bluetoothイヤフォンを使って人と電話をしながら最寄り駅前まで歩いた。駅に着きそうだったけれど話が終わらないので仕方なく少し立ち止まって路面に本棚を並べる古本屋を覗いて本を手に取った。
「死刑のための殺人ー土浦連続通り魔事件・死刑囚の記録ー」(新潮社)だ。
ハードカバーで150円。小銭を払って何気なく読み始めたらこれが面白い。どんどん読んでしまう。

元々ノンフィクションが好きだ。これについては何故そうなのか一時期考えたことがあるけれど、大した自己分析にならなかったからうまく説明ができない。それにしても何故この本に惹きつけられたのか。本書は「死にたいが自殺は痛そうだし失敗したくないので人を2人以上殺して死刑になろうとした男」にまつわる話だ。答えのなさそうな題材になんとも言えず惹かれた。1日半くらいで読み終えた。

内容はもとより、すごく久しぶりに「時間さえあれば読みたい」と思える本が手元にあった。その感覚が至極豊かな感じがして、液晶画面以外を見ていること、ページの手触り、読むスピード、行間で巡る想像とか余白とか云々。読書の楽しみが帰って来たことが嬉しかった。

読み進めていくと、1977年に同じように死刑を求めて罪を犯した男の話が本になったものがあると知った。「心臓を貫かれて」(マイケル・ギルモア/村上春樹訳)。その題材で村上春樹かぁ、読みたい。さらに自分の本棚(ここ最近で300冊くらいは積読を処分したのだ)を確認したらやはり森達也の「死刑」が出てきた。これも積読だったがようやく読む日がやってきたか。

読みたい本が読める幸せ。殺人を犯したり、死刑になったりするような暇はない。そういう時間と共に本がある。

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