第45話『破滅との関係』
歌舞を好んだために身を滅ぼす、あるいは歌舞の巧みな女性に心奪われて身を滅ぼすという話しは珍しくありません。
長い旅をしている隊商の一員が、ふと魔が差して命を危うくする災難に遭うとか、苦労して危険から抜け出すという話しは、国や文化に関わらず見られる、ありふれたお話しと言えます。
ただ、このお話しに関わっている運命の流れは、どんなに複雑に見えてもひとつかふたつしかなく、商人としての本人の自負はさておき、どのくらいの強さで商人としての運命に縛られているかだけが、ことの運びと関係しているのです。
トルコやその近隣では、この運命との関わりをうまく断つ技術が発見されていましたが、イスラームの教えが盛んになってからは、あまり顧みられることがなくなっていきました。
アラビアンナイトで語られている物語の中には、このことの名残りを感じさせる物語が、いくつか見て取れます。
荷物の配達に関わる人々も、実は同じ影響を受けているのですが、この事は、あまり知られていません。
何に強く縛られているかを見定めていくことが難しいこと自体も、本来はもっと盛んに論じられるべきだという人たちもいますが、何分複雑になり過ぎる傾向があってうまくいったためしがありません。