第41話『山の小鬼』
南西部の高い山々の奥深くに、小鬼たちが住まう谷があるという言い伝えがあります。
小鬼たちは弓矢の扱いが巧みで、人を全く寄せ付けません。
あるとき、勇猛で名高い騎士が、この小鬼たちの住まう山に分け入り、巧みな忍びの技で小鬼たちの様子を探りました。
騎士は小鬼を一人捕らえて話を聞いたところ、どうやら世の中で言われている様子とは違うらしいということを知ります。騎士は小鬼を解放し、そのまま一緒に小鬼たちの里に入りました。
騎士は弓の扱いも巧みで、小鬼たちの間に交わって、粗雑だった弓や矢の作り方、弓の引き方などを教えてしばらくを過ごしました。
実は、騎士はこの山々に接する国の王子でした。小鬼たちの領分を脅かさないと約束し、時々一緒に猟をするために山を訪れました。また、小鬼たちは沢山ではありませんが、どうかして山から宝石や不思議なものを手に入れるので、細々と交易も行いました。
あるとき、王子の国が攻められ、長く王城が包囲されることがありました。しかし、ある夜の間に包囲軍が一掃されることがありました。どうやら小鬼たちが王子を助けるために夜襲をしかけ、見事全滅させた様です。
小鬼たちは、王国への貢物として、一匹の亀を携えていました。
その亀は、寿命が尽きる前に歩みに未来を映すと言われており、長く王城の近くの池でその姿を見ることができたそうですが、人々には、この貢物はいまひとつだと思われていました。