第36話『雨の日の外出』
雨の日に外出してはならない理由が確かにあったらしいことは、はっきりしていました。
村の古老だけでなく、村人たち皆それぞれが、雨の日に外に出たせいで死んでしまった誰かのことをうっすらと覚えていたのです。
ただ、死んでしまった理由が、雨の日だったからというだけではなく、本当は、雨の日にした何かがきっかけで、命を落としてしまうことになったのだということ。その何かについて、少しだけ考えてはいるのですが、本当に誰も突き詰めて考えることはしませんでした。
雨の日に外出しないことは、まるで日が昇る様に、あたりまえのことになっていき、誰も雨の日に外出してはいけないと言わなくなってからしばらくして、たまたまこの村を通りがかった商人が雨具をもたらしました。
その頃の村人たちは、自分達が雨の日に外に出ない理由について、昔からそんな風に言われているとしか知らなかったので、雨具を大変珍しがり、それを使って雨の日も少しづつ外に出る様になって、やがては雨の日も外出をする様になったということです。
何が違ってなにも起こらなくなったのかを知る人は誰もいません。