第54話『静かに暮らす姉妹』
人里を離れて豆を育てて暮らしている姉妹が居ました。
姉も妹も、透き通った美しい瞳をしているものの、近くの村の村人たちは、かえってその冴えた色の目が、少し恐ろしいような気がしており、普段はあまり行き来がありませんでした。
姉妹は月が欠け始めた頃と、満ち始めた頃に、決まって村にやってきて、豆や作物、二人が作った様々な品を持ってきては、暮らしに必要なものと交換していくのでした。
まだ村で暮らしている姉妹の親類が、二人にそろそろ結婚してはどうかと勧めますが、なかなか婿に入ってくれる手頃な相手が見つからないまま、月日が過ぎていくのでした。
気をもむ親類をよそに、二人はのんびりと毎日を過ごして、つましく暮らしています。
ある時、大怪我をした武者が二人の家の近くで行き倒れていました。どうやら都の方で戦が起こり、落ち延びてきた様です。
二人は、家にこそ入れることはありませんでしたが、近くの空き家にこの武者をかくまい、怪我が治るまで甲斐甲斐しく世話をしました。
やがて、都での混乱が収まり、武者も都に戻ったのですが、二人のことが忘れられなかったか、王の許しを得、郎党を従えて姉妹のところに戻ってきて、周囲の森を切り開いて荘園を作りました。
そのあとの詳しい話しは残っていませんが、その辺り今も栄えており、冷ややかに冴えた美しい目の娘といえば、この辺りの出身だと見て間違いないということです。